小悪魔DOLL【Ⅰ】



そして、数分後。

「ふむ」

由依が腕を組んで、頷いた。

そして、静かに口を開いた。


「行き止まりだ」

「見れば分かるわよ!!何落ち着き払って言ってんのよ!!!」

「ぎゃーぎゃー喚くなよ」

「あんたが連れてきたんでしょ!!よく逃げ切れる気満々で、ここ来たじゃない!!最悪!!!」

ツルの集団から逃れようと走り出したあたし達は、右の路地裏に逃げ込んだ。そして、そこは袋小路だった。


それでも、なんとか逃げ道を探そうと、古びた建物の外に備え付けられた螺旋階段を登って、屋上へと飛び出した。

二階建ての屋上。そこまで迫っているツル。逃げ切れるわけがない。能天気な犬は、この最悪な状況にも動じることなく、ポリポリ頭を掻いている。

「そのバカらしいマスク外しなさいよ!!目障りなのよ!!」

由依の行動も、派手なヒーローマスクも、苛立たしかった。こんな状況で馬鹿げたマスクを装着しようと思った気持ちは到底理解できない。コイツがバカだということは、わかった。

「お前こそバカかよ!これは、最強の防具だぞ!」

「あんたにバカなんて言われる筋合いないわよ!!!」

「何もわかっちゃねえな。マスクを被れば、誰が誰だかわかんねーだろ?」

「あんたの正体はバレてんのよ!!それに正体隠したいなら、自分のカラー身につけてたら意味ないじゃない!!!紫色のマスク被ったら、遠くからでもあんたの居場所がわかるでしょ!!!」

「そんな目立つ事したら、もろバレじゃねーか!!」

だから、そう言ってんじゃない!!

何なの!?バカなの!?

急いでマスクを外した由依が、犬のようにブルブル頭を振った。カフェオレ色の髪が、夕陽の光りを吸収して輝いた。


「ふむ」

由依が腕を組んで、頷いた。そして、静かに口を開く。

「行き止まりだな」

「仕切り直してんじゃないわよ!!!」

同じ格好で同じ台詞を吐くから、デジャブかと思ったじゃない!!

そして、錆びれた螺旋階段が軋みだす。右手に持った傘を強く握りしめる。複数の足音が響き渡り、あたしは振り返った。