小悪魔DOLL【Ⅰ】




夕陽の輝く空の下。

春風がミルクティー色の髪をさらっていく。

こんなにも気持ちのよい風が吹いても、あたしの顔はどんどんと歪んでいくのだ。帰り道、沈み始めた太陽がキラキラと輝いて、ストーカーの満面の笑みをオレンジ色に照らしていた。

どんな嗅覚をしているのか、逃げても隠れてもシオンから逃れる術はない。

不服だ。


「今日は夕方から雨が降るんだって!だから、あいくちゃんとお揃いの傘買ったんだ!これ、あげる!」

突きつけられた傘を受け取れば、シオンが喜びに身震いをした。

「あ!!あいくちゃん!!あそこのコーヒーショップ、この前オープンしたばかりなんだよ!!他にも店舗があるみたいなんだけど、すごく美味しいって聞いてたから、行ってみようよ!!!」


【GOD BRESS COFFEE】だ。

ここのカフェモカは絶品だった。

でも、ストーカーとコーヒーショップに行って、何が楽しいの?カフェモカの美味しさが半減するじゃない、やれやれ。



「放課後に親友とこういう所で、恋バナするのが夢だったの!!SNSにカプチーノの写真アップしたり、あいくちゃんと化粧品のお話したり、次のデートでツインズコーデしようねって雑誌見せ合ったり!!」

目を輝かせて、ガラスの向こうでコーヒーをたしなむ客達を見つめて、シオンがうっとり言った。夢気分のシオンに、あえて一つだけ言うとするならば、コレだ。

「親友ではない」

あんたとツインズコーデするくらいなら、死んだほうがマシ。

「あんたもSNSやってんの?」

「うん!!SpetterもinstegrimもTicPikもやってるよ!!フォロワーは0だけど、フォローは10000人以上してるよ!!!」

ちょっと、何言ってるかわからない。



その時だった。

ドドドドドッ、複数の足音が響き渡る。シオンが口をパクパクさせながら、あたしの後ろに視線を向けている。その表情が気になって、あたしも振り返り、シオンの視線の先に目を向けた。

そして、大きく目を見開くのだ。