「ついでに、僕が載ってる雑誌も全冊買ってね。ポスターもコンサートグッズも買ってくれるよね?君の持ってる全財産、僕のために使ってくれるよね?僕のこと、好きだもんね?」
笑みを浮かべた斗愛の瞳は全く笑っていなかった。
「……うるさい、黙ってっ!」
あたしの唸り声も、斗愛は無視をした。
歪むあたしの顔を楽しげに見つめて、閉じることのない口を動かし、あたしをバカにする。ジャラジャラと揺れるアクセサリーが耳障りだ。
「所詮アイドルなんてそんなもんだろ。KANATAを崇拝してるお前は、アイツを神様みたいに思ってんだろうな?アイツは、ただの金の亡者だよ。振り向いてほしけりゃ、貢げよ?」
ココア色の髪がさらりと揺れた。
ギラギラとぎらついた瞳は、人の心をズタズタにする刃みたい。優しく包み込むようなKANATAの瞳とは比べ物にならないほど、冷たかった。
「そうすりゃ望み通り、抱いてくれんだろ?」
神から見放された悪魔が、何ほざいてんのよ。
あんたが馴れ馴れしく、KANATAを語らないでよ。
「KANATAは……っ、あんたみたいなヤツとは違うっ!!」
ベストアルバムを強く抱き締めて、斗愛を睨み付けた。
「あんたはデビューもできないくせに、何のためにここにいるわけ?」
口角を上げていた斗愛も、あたしの発言に顔色をかえた。
「黙れよ」
あざ笑っていた表情が消え、冷たく鋭い瞳を向ける。
「あー。お前、うちの事務所から天使系アイドルでデビューすんだっけ?俺さ、お前みたいなの、大嫌いなんだよね。初対面でプロポーズする痛い女」
斗愛の言葉に、拳を握りしめた。
反論が出来なかった。
コイツに嫌われていようが、関係ない。どうでもいい。それでも、きっとその時は突然のことに対応出来なかったんだ。いつも何も考えなくても吐き出せる罵詈雑言が、全く出てこなかった。
「お前、全然可愛くねえし」
鼻で笑った斗愛が、真っ直ぐとあたしを見据えて、悪びれる様子もなくそう言ったんだ。
「アイドル、辞めろよ」
この日の悪魔の声が、耳にこびりついて離れなくなった。
