小悪魔DOLL【Ⅰ】




「ついでに、僕が載ってる雑誌も全冊買ってね。ポスターもコンサートグッズも買ってくれるよね?君の持ってる全財産、僕のために使ってくれるよね?僕のこと、好きだもんね?」

笑みを浮かべた斗愛の瞳は全く笑っていなかった。

「……うるさい、黙ってっ!」

あたしの唸り声も、斗愛は無視をした。

歪むあたしの顔を楽しげに見つめて、閉じることのない口を動かし、あたしをバカにする。ジャラジャラと揺れるアクセサリーが耳障りだ。

「所詮アイドルなんてそんなもんだろ。KANATAを崇拝してるお前は、アイツを神様みたいに思ってんだろうな?アイツは、ただの金の亡者だよ。振り向いてほしけりゃ、貢げよ?」

ココア色の髪がさらりと揺れた。

ギラギラとぎらついた瞳は、人の心をズタズタにする刃みたい。優しく包み込むようなKANATAの瞳とは比べ物にならないほど、冷たかった。

「そうすりゃ望み通り、抱いてくれんだろ?」

神から見放された悪魔が、何ほざいてんのよ。

あんたが馴れ馴れしく、KANATAを語らないでよ。


「KANATAは……っ、あんたみたいなヤツとは違うっ!!」

ベストアルバムを強く抱き締めて、斗愛を睨み付けた。

「あんたはデビューもできないくせに、何のためにここにいるわけ?」

口角を上げていた斗愛も、あたしの発言に顔色をかえた。



「黙れよ」

あざ笑っていた表情が消え、冷たく鋭い瞳を向ける。

「あー。お前、うちの事務所から天使系アイドルでデビューすんだっけ?俺さ、お前みたいなの、大嫌いなんだよね。初対面でプロポーズする痛い女」

斗愛の言葉に、拳を握りしめた。

反論が出来なかった。

コイツに嫌われていようが、関係ない。どうでもいい。それでも、きっとその時は突然のことに対応出来なかったんだ。いつも何も考えなくても吐き出せる罵詈雑言が、全く出てこなかった。


「お前、全然可愛くねえし」

鼻で笑った斗愛が、真っ直ぐとあたしを見据えて、悪びれる様子もなくそう言ったんだ。

「アイドル、辞めろよ」

この日の悪魔の声が、耳にこびりついて離れなくなった。