小悪魔DOLL【Ⅰ】



口元が緩くなった。

もうKANATAはいないのに、口角があがって、心臓の鼓動が鳴り止まない。KANATAへの想いがより一層膨らんだ。

もっとKANATAを知りたくて、もっとKANATAに触れていたいと思った。

体が壊れてしまいそうなのに、その先を知ってみたい。

「……幸せ」

ベストアルバムを強く強く抱き締めた。

「だっせー」

低い声が響き渡った。

KANATAの世界に浸っていたあたしは、眉間にシワを寄せて振り返った。

なんでコイツが居んのよ。

被っていた黒いフードを脱いで、ココアブラウンの髪を揺らす。先ほどまでKANATAを間近で見ていたからか、暗闇に溶け込もうとする黒い服装の斗愛は神に地獄に堕とされた悪魔みたいだ。

胸元の十字架のシルバーネックレスが光った。

あたしまで天国から地獄に突き落とされた気分だ。


「でっかい声でプロポーズする声が聞こえてさ。どんなブスがKANATAに告白してんのかと思って見に来てみたら、お前だったよ」

「ブス?期待外れで悪かったわね」

「期待外れ?」

ポケットに両手を突っ込み、斗愛が気だるげに歩み寄った。バカにするように顔を覗き込んで、大袈裟に首を傾げる。

「期待通りだったよ。高飛車なブスが大声で告白して、無様にフラれてた。残念だったな?」

「はぁーーーーっ!?誰がブスよ!それに、フラれてなんてないから!KANATAは嫌な顔なんて一つもしてなかった!」

「どこまでも、めでたいヤツだな。じゃぁ、それなんだよ?お前が手に持ってるやつ」

顎でCDを指して、斗愛が言った。

ニヤリと笑った斗愛は、悪魔みたいだ。

「CDにサイン貰えて嬉しいなんて、思ってねえよな?ただのファンサービスじゃねえか」

……ちがう。

そんな言葉で、片付けないでよ。


「好きですって言われて、アイドルが断れると思うか?わかってねえなら、KANATAのかわりに教えてやるよ。僕は君のこと好きじゃないけど、君はいつまでも僕のことすきなままでいてね。CDいっぱい買ってね」

演技がかかった口調で、斗愛が言った。

KANATAの真似をしたつもりだろうけど、全く似ていなかった。KANATAはそんなこと思わない。

コイツは、……最低だ。