小悪魔DOLL【Ⅰ】


神話の世界から舞い降りた使者のように神々しく、おとぎ話から現れた騎士のように優雅で、ジャケットに散りばめられたダイアのような石は、まるで衣装みたいに華やかだ。

そうだ……、なんでいるの?

「コンサート、は……?……どうして」

消え入りそうな呟きに、KANATAは二回瞬きをして瞳の奥を見るように覗き込んだ。

逢えないと思ってたのに。

KANATAは10周年コンサートがあったはずなのに。

コンサートの終わる時間はとっくに過ぎているけど、何のためにレコーディングスタジオにいるのかわからない。

「よく知ってるね。今日は少しここに用事があって」

KANATAが口角を上げて、微笑んだ。

知ってる。

ずっと前から、KANATAのこと見てきたんだもん。

知ってるに決まってるよ。

運命って、本当にあるんだ。

あたしがKANATAを見つけたのも、あたしがKANATAを追いかけてこの街に来たのも、あたしが今日ここでKANATAに初めて出逢ったのも、全て運命なんだ。そう考えれば、足に手に力が入った。

KANATAを正面から、真っ直ぐと見上げた。


KANATAに、伝えたかった。

今までKANATAを想ってきたこと。それでも、上手く伝えられる気はしなかった。でも、伝えないと後悔する。

あたしは、何のためにこの街に来たの?

そんなの、明白じゃない。

「……あのっ、」

あたしは勇気を振り絞り、KANATAを見つめた。

「好きです」

拳を強く握っていた。

緊張しすぎて、拳がふるふると震えた。真っ直ぐとKANATAを見つめていたけど、何も見えていなかった。KANATAがどんな表情であたしを見つめていたのか。見る余裕すら、無かったんだ。


「結婚してくださいっ!」

2人きりの通路に、あたしの声が大きく響き渡った。