どくんどくん、どくんどくん。
心臓が胸から飛び出そうと暴れ回っていた。
ミエルグレージュの瞳が真っ直ぐとあたしをとらえて、その濃密な瞳を見続けることは出来なかった。
顔がカァッと熱くなって、あたしは思わず目を反らしたんだ。
KANATAの瞳の中に入ることが、耐えられなかった。
「ごめんね、少し強引だった」
あたしの手首からパッと手を離して、無害をアピールするように手のひらを見せて微笑んだ。
穏やかな声が耳にするりと入り込み、心臓をギュッと収縮させる。体の異変に対応出来ずに、息があがる。
もしKANATAに出逢えたら……。
そう何度も考えたシミュレーションさえ、今は思い出すことも出来なかった。いくつもの引き出しを急いで開けても、中に入ったモノが溢れ出して重要な記憶を見つけることも出来ない。でも、このままなんて嫌だ。
「顔が赤い、……熱?」
怪訝そうに呟いて、顔を覗き込む。
王冠を冠ったクロスのゴールドネックレスと、重ねつけされたロケットペンダントがぶつかり合って、小さな金属音を奏でた。
顔が熱い。
体の血液が沸騰してしまいそうだ。
離れたい。
そうじゃないと、心臓も体ももたない。
あたしはショコラのように、舌の上で溶けて消えて無くなってしまうかもしれない。
こんなこと、人生で初めてだ。
KANATAに触れられただけで、こんなにも体がおかしくなるなんて。
そばにいて、触っていて欲しいのに、体も心も頭も追いつかなくて、自分の全てが壊れてしまいそう。
こんな感覚は、初めてだ。
