先程まで高ぶっていた感情が沈まれば、一日の疲れがどっと押し寄せた。体が重くなり、立つこともだるかった。
「……ねむい」
重たいまぶたをゆっくりと落として、静かに呟いた。
目を閉じれば、今日の出来事が駆け巡る。
綺麗な洋服を着て、可愛いメークを施され、撮影をした。
取材は何を聞かれたのか、覚えてない。
完璧なレコーディングが出来ると思ってた。
あたしは何も出来なかった。全て上手くいかなかった。
本当だったら、今頃KANATAのコンサートの余韻に浸っていたはずなのに……。
シオンはKANATAのコンサートを楽しんだんだ。
シオンはKANATAに逢えたのに、なんであたしは逢えないの?
コンサートに行くために、友達契約を結んだのに。
あたしは唇を噛み締めた。
「……ほんと、最悪」
歯の隙間から、ぼやいた。
頭が割れるように痛くて、体は水の中に入ってもがいたように気だるかった。鈍い体に力を入れて、出口に向かおうと振り返った時だった。後ろから歩いてきた男性の胸板に思い切り顔面をぶつけて、息がつまる。
思考が鈍っていたあたしは、後ろに人がいたことに気づかなかった。
「大丈夫?」
優しく掴まれた手首の力に引き上げられるように、顔を上げた。ミルクティー色の髪がサラサラと雪崩落ち、声の主を視界に入れる。
時が、止まった。
