「コンサートドタキャンして、レコーディング入れて、散々な結果じゃないっ!マネジメントするって意気込んでたくせに!!誰のせいで、こうなったと思ってんのよ!!」
通路にあたしの声が響き渡る。
ミルクティー色の髪が大きく揺れて、感情のままに怒鳴り散らした。
「今日KANATAに会えれば、わかったのに!」
恋する乙女の気持ちだって。
KANATAのコンサートに行けば、あたしにだってわかったはずなんだ。
「あんたさえ邪魔しなければ、すべて上手くいったのにっ!!」
肩で息をしながら、青木を睨み付けた。
感情が高ぶって、鼻の奥がツンと刺激された。
目頭が熱くなる。
拳を強く強く握っていた。
青木がどんな反論をしようと、言い返す準備は出来ていた。頭の中の引き出しにある思いつく限りの罵詈雑言を浴びせる用意は出来ていた。
しかし、青木は一切反論することはなかった。
「今日はもう、帰りましょう」
青木が静かにそう言った。
言い返す事も無く、大人ぶる青木に噛み付いてやりたかった。あたしの発言に優しく微笑む青木の表情を、歪めてやりたかった。
「……とりあえず、雑巾取りに行ってきますから、少し待っててください」
返事をすることのないあたしに背を向けて、青木は雑巾を探しに行った。
やり場のないこの怒りは、どこに向ければいいの。
空調の風に揺られて、カラになったカップがコロコロと転がった。
そして
「あーあー、こんなに汚しちゃって」
男の声が響き渡った。
