思わず、耳を疑った。
1秒でも早く車に向かおうとしていた足が動かなくなる。
青木に目を向けて、
青木が口を開くまで、
あたしの時間は止まっていたんだ。
「今から急いでも無駄です。シオンさんには事情を説明して、納得してもらいました」
KANATAのコンサートを、……断った?
「なに、勝手なこと言ってんの……?」
あたしの声は震えて、空気に彷徨い消えて行く。
やっと、やっと、KANATAに会えると思ったのに。
「シオンさんには他の人と行ってくださいと伝えました。もし2人分キャンセルしたとしても当日券に回って、他の方が現地で購入できます。KANATAくんのコンサートの席が空くことはないので安心してください」
10年も待って、ようやく手にいれたチャンスなのに。
なんで、あんたにそれを奪う権利があるって言うのよ?
「今から、ウエストウッドのレコーディングスタジオに行きます。新曲、しっかり覚えてますよね?レコーディングしますから、車用意してきます」
冷酷にそう告げる青木に、ふるふると体が震え始めた。
勝手にそう言って、勝手に背を向ける。あたしの気持ちもあたしの思いも無視をして、青木は淡々と指示を出すんだ。
KANATAに対する想いを、踏みにじられた。
あたしはKANATAに会う事を10年待ってたのに。
その想いも、青木は平気で踏みつぶすんだ。
この震えを、この怒りを、抑えようとしても到底無理だった。
