小悪魔DOLL【Ⅰ】



「ウエストウッド事務所初の女性アイドルとしてデビューされますね!おめでとうございます!」

「……え?あ、……はい」

「スプリングフェスティバルで新曲を披露されるんですよね?」

「あー、はい。……そうです」

取材を受けていても、耳の奥に響くのはシオンの声だった。



『……あたしっ』

ブラリとシオンの両腕が垂れ下がった。

大きい目が二倍に見開いて、あたしを映す瞳が溢れ落ちそうに揺れた。肩にかかっていた鞄がずれ、ガコンと大きな音をたてて床に落ち、シオンの私物が飛び出した。目に涙をためたシオンが、震えながら呟いた。

『ほんとに……ごめんなさい……』

『邪魔だから、そこどいてよ』

あたしは今すごく忙しいんだ。

青木がいつ捕まえにくるかわからない。アイツは可愛い美少女を監禁する趣味を持つ変態なのだから。

『KANATAくんのコンサート……っ』

ん?

『あいくちゃんと行きたかった……』

ん?ん?

『……でも、……諦めます』

ん?ん?ん?

シオンはしゃがみこんで、地面に落ちたスマホを拾い上げた。

スマホの画面にはKANATAのコンサートチケットのQRコードが映し出されている。スマホの説明を受けた時に、青木が言っていた。今はスマホでコンサートのチケットが取れるらしい。スマホ画面は、それに違いない。

シオンは、この場から立ち去ろうとした。


『ごめんなさいっ。ご迷惑おかけして、……本当にごめんなさいっ。』

『ちょっと、待ったぁーーーー!!!!!』

それを止めたのは、このあたしだった。