「ウエストウッド事務所初の女性アイドルとしてデビューされますね!おめでとうございます!」
「……え?あ、……はい」
「スプリングフェスティバルで新曲を披露されるんですよね?」
「あー、はい。……そうです」
取材を受けていても、耳の奥に響くのはシオンの声だった。
『……あたしっ』
ブラリとシオンの両腕が垂れ下がった。
大きい目が二倍に見開いて、あたしを映す瞳が溢れ落ちそうに揺れた。肩にかかっていた鞄がずれ、ガコンと大きな音をたてて床に落ち、シオンの私物が飛び出した。目に涙をためたシオンが、震えながら呟いた。
『ほんとに……ごめんなさい……』
『邪魔だから、そこどいてよ』
あたしは今すごく忙しいんだ。
青木がいつ捕まえにくるかわからない。アイツは可愛い美少女を監禁する趣味を持つ変態なのだから。
『KANATAくんのコンサート……っ』
ん?
『あいくちゃんと行きたかった……』
ん?ん?
『……でも、……諦めます』
ん?ん?ん?
シオンはしゃがみこんで、地面に落ちたスマホを拾い上げた。
スマホの画面にはKANATAのコンサートチケットのQRコードが映し出されている。スマホの説明を受けた時に、青木が言っていた。今はスマホでコンサートのチケットが取れるらしい。スマホ画面は、それに違いない。
シオンは、この場から立ち去ろうとした。
『ごめんなさいっ。ご迷惑おかけして、……本当にごめんなさいっ。』
『ちょっと、待ったぁーーーー!!!!!』
それを止めたのは、このあたしだった。
