小悪魔DOLL【Ⅰ】








「あいくーーーーーーーっ!!!!」

ウエストウッド敷地に響き渡る声。

その声は事務所の壁や塀に反響して、空へ吸収された。耳障りな呼びかけに顔を向ければ、青木が肩で息をしながら、こちらに向かってやってくる。

出たな、くそポンコツ野郎!!!!
お前のせいで、どんな目に合ったと思ってんのよ!!!!!!!

あたしは立ち上がって、青木を罵倒する戦闘体勢を整えた。





「何やってんすか!!第3会議室に行くよう伝えてあったのに!!!!」

えっっらそうに!

「そんなこと、知らないっ」

あたしは由依樹理に拉致されて、ここに来たんだ。

自分で来た訳じゃない!


「知らないってなんですか!次のスプリングフェスティバルで、君は正式にデビューする!遊んでいる暇なんかないんですよ!!勝手な行動ばっかして!」

「勝手な事なんてしてないじゃないっ!!」

グッと拳に力をいれれば、手の甲が痛んだ。

顔を歪めて手をさする。そんなあたしを見て、青木が視線を下げた。




「もしかして、ケガでもしたんですか!?腫れてるじゃないですか!!!何やってるんですか!!!!!」

「青木さん、落ち着いてください」

「里央くん、あいくのフォローなんてしなくていいんですよ。彼女は自分がこれからアイドルになることを、全く自覚していないんです!自分の体が商品であることもわかってない!!じゃなかったら、こうやって遊んで怪我なんてするわけがないのに!!!」


「ごもっともですよ、青木さん?」

斗愛が背後で笑った。

なんでコイツが偉そうなこと言えるのよ!!

手の甲を叩いた張本人が、よくも悪気もない顔で言えるわね。

絶対、許さない!!!!



「あんたが……っ!」

「斗愛くんは、先輩だぞ!!」

青木がひっくり返った声で叫んだ。




先輩だからって、なんなのよ。

コイツは人間として、クズだ。

こんな奴、先輩として認めない。

何かと決めつけて、あたしを皆の前で怒鳴りつけなくてもいいじゃない。

青木はあたしのマネージャーのくせに、なんでコイツらを擁護するのよ!!

青木がいない間のこと、何も知らないくせにっ!!


被害者はあたしなのにっ!!