コイツ、あたしを轢き殺そうとしたヤツだ。
ドカリと偉そうに腰を下ろした斗愛に視線を向けて、由依が口を開いた。
「優空に連絡したんだけど、返事返って来ないんだよなー。ま、主役いなくても、楽しければ結果オーライっしょ!!」
「由依はただ騒がしいのが好きなだけ。ボクもあの顔だけ男が来るなら、いないほうがまだマシだけど。ブスがいることによって、利害はプラマイゼロになっちゃったけどぉ」
「そのブスって、誰の事言ってんのよ!!」
「能がないヤツだなぁ!何回言ったらわかるんだよ、おまえのこと以外ないだろぉ?」
子供のような口調で、樹理が吐き捨てた。
当然だとばかりに肩をすくめる樹理に、あたしは奥歯を噛み締めた。桜を見上げていた斗愛が初めて視線をこちらに向けた。
「お前居たんだ、当たり屋」
「誰が当たり屋なのよ!!轢き殺そうとしてきたのは、あんたでしょ!!」
由依樹理に巻き込まれた苛立ちに怒りが増幅し声を荒げ、斗愛に向かって人差し指を突きつけた。その行為に眉間にシワを寄せた斗愛が、パシーンと叩き落とす。あたしの手はビニールシートにへばりついた。
「調子乗んなよ、俺に指を差すな」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!?」
ギリギリと歯ぎしりをして、斗愛を睨みつけるあたしを、アイツはもう見てもいなかった。一升瓶から注がれたスポーツ飲料の香りを嗅いで、由依に文句を吐いていたからだ。
「なんだこの甘ったるいの」
「世界一、うまい飲みもん!」
あたしはピリピリと痛んだ手の甲をさすった。
斗愛の手形がくっきりとついていた。
あんな奴の手形がつくなんて、最悪だ。強く拳を握れば、手の甲の皮膚が伸びて、またヒリヒリと痛んだ。
