小悪魔DOLL【Ⅰ】








コイツ、あたしを轢き殺そうとしたヤツだ。

ドカリと偉そうに腰を下ろした斗愛に視線を向けて、由依が口を開いた。




「優空に連絡したんだけど、返事返って来ないんだよなー。ま、主役いなくても、楽しければ結果オーライっしょ!!」

「由依はただ騒がしいのが好きなだけ。ボクもあの顔だけ男が来るなら、いないほうがまだマシだけど。ブスがいることによって、利害はプラマイゼロになっちゃったけどぉ」

「そのブスって、誰の事言ってんのよ!!」

「能がないヤツだなぁ!何回言ったらわかるんだよ、おまえのこと以外ないだろぉ?」

子供のような口調で、樹理が吐き捨てた。

当然だとばかりに肩をすくめる樹理に、あたしは奥歯を噛み締めた。桜を見上げていた斗愛が初めて視線をこちらに向けた。




「お前居たんだ、当たり屋」

「誰が当たり屋なのよ!!轢き殺そうとしてきたのは、あんたでしょ!!」

由依樹理に巻き込まれた苛立ちに怒りが増幅し声を荒げ、斗愛に向かって人差し指を突きつけた。その行為に眉間にシワを寄せた斗愛が、パシーンと叩き落とす。あたしの手はビニールシートにへばりついた。


「調子乗んなよ、俺に指を差すな」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!?」

ギリギリと歯ぎしりをして、斗愛を睨みつけるあたしを、アイツはもう見てもいなかった。一升瓶から注がれたスポーツ飲料の香りを嗅いで、由依に文句を吐いていたからだ。




「なんだこの甘ったるいの」

「世界一、うまい飲みもん!」

あたしはピリピリと痛んだ手の甲をさすった。


斗愛の手形がくっきりとついていた。

あんな奴の手形がつくなんて、最悪だ。強く拳を握れば、手の甲の皮膚が伸びて、またヒリヒリと痛んだ。