小悪魔DOLL【Ⅰ】



猫のような男の子を見つめて、飛んでいってしまった記憶をたぐり寄せる。今日、あたしは初めて自分が所属した事務所を訪れたんだ。


生クリーム色の高い塀。

アイシングクッキーのような大きな門。

門の両脇には、大柄な門番がいた。

まるで別世界の入り口だった。

この門をくぐれば、KANATAが待っている。

だって、ここはあたしが所属した超有名芸能事務所なのだから。

門番が大きな門を開くと、あたしのストーリーが動き始める。風が吹き抜け、髪が舞い上がった。この世界を見渡すようにくるりと顔を動かした。


カラフルな花がキャンディーのように咲く。

噴水の水がシロップのように輝く。

門から伸びたレンガの道の先には、真っ白なお城があった。

まるでウエディングケーキのようなお城の上には、ちょこんとチョコプレートが乗っている。

そして、ホワイトチョコでデコレーションしてあるの。

【WESTWOOD】

『……ウエストウッド』

あたしは事務所の名前を口にした。


ここが、……KANATAのいる事務所。

この世界に迷い込み、足がフワフワと浮遊して、今にも空を飛んでいけそう。青木が電話を終えた後『上司に呼ばれたので、先に3階のミーティングルームに向かっていてください!』と叫んでいたけれど、聞いていなかった。

だって、花も、木も、噴水も、道も、建物も、

全て現実離れしていて、

ここはまるで魔法の世界みたいだ。