猫のような男の子を見つめて、飛んでいってしまった記憶をたぐり寄せる。今日、あたしは初めて自分が所属した事務所を訪れたんだ。
生クリーム色の高い塀。
アイシングクッキーのような大きな門。
門の両脇には、大柄な門番がいた。
まるで別世界の入り口だった。
この門をくぐれば、KANATAが待っている。
だって、ここはあたしが所属した超有名芸能事務所なのだから。
門番が大きな門を開くと、あたしのストーリーが動き始める。風が吹き抜け、髪が舞い上がった。この世界を見渡すようにくるりと顔を動かした。
カラフルな花がキャンディーのように咲く。
噴水の水がシロップのように輝く。
門から伸びたレンガの道の先には、真っ白なお城があった。
まるでウエディングケーキのようなお城の上には、ちょこんとチョコプレートが乗っている。
そして、ホワイトチョコでデコレーションしてあるの。
【WESTWOOD】
『……ウエストウッド』
あたしは事務所の名前を口にした。
ここが、……KANATAのいる事務所。
この世界に迷い込み、足がフワフワと浮遊して、今にも空を飛んでいけそう。青木が電話を終えた後『上司に呼ばれたので、先に3階のミーティングルームに向かっていてください!』と叫んでいたけれど、聞いていなかった。
だって、花も、木も、噴水も、道も、建物も、
全て現実離れしていて、
ここはまるで魔法の世界みたいだ。
