「はぁぁぁぁ!?もう絶対天使なんかやんない!!」
都会のど真ん中でネチネチと説教を垂れてくる青木に向かって、あたしは叫んだ。騒がしい街の中では、あたしの声はすぐに吸収される。
田舎町ならやまびこのように、どこまでもいつまでも響いていくのに。
事務所が用意したという、一人暮らしの部屋。
そこに向かうまでに何とか青木の連絡先を抹消しようと試みたのに、失敗に終わった。それに、逃走撃を繰り広げている時に田舎町から持ってきた荷物も全部なくしてしまった。
それをネチネチとループして説教垂れてくる陰険マネージャー青木だ。
「子どもっすか!!……君の夢は何ですか?」
「KANATAのお嫁さんになること」
「そうっすよ。デビューして、トップアイドルになって、KANATAと結婚することでしょう?有名になって、KANATAに会いたくないですか?会いたいなら、俺の言う通りにしてください」
「でもね、あおきぃ。あなたの連絡先が入ってるのは、苦痛で仕方ないのぉ……。嘔吐しそうなのぉ……。け・し・て♡」
「ぶっふぉ!!」
憂いを帯びた表情で上目遣いを使ったら、青木がむせ込んだ。
「……くそっ。言ってる事は糞なのに、顔が天使すぎて声が甘すぎて、不覚にも許してしまいそうになった……っ。なんちゅー恐ろしい悪魔っすか……くそっ」
青木はキリッとした表情を作った。それでも、擦りすぎて鼻の下が真っ赤なのに、そんな顔で真面目腐った顔をしても無駄だ。
「約束する」
無駄だと思っていたのに。
「俺は必ず、あいくをトップアイドルにする」
青木が力強くあたしを見据えた。
瞳の奥に、未来が見えた。
大勢の観客がいる大きなステージで、あたしはきらびやかな衣装を着ている。KANATAと同じ舞台に立っている。
青木と進めば、あたしは自分の夢に近づけるのかもしれない……。
不覚にも、そんなことを思ってしまったんだ。
