「君は僕の腕の中でいい子にしてなくちゃ」
この堕天使の手のひらに転がされていたと思うと、悔しくてたまらない。
都会の武器で惑わせて、翻弄されてしまった自分が許せない。
「あんたの腕の中なんて願い下げ……っ」
唸るようにそう言って、腕を振りほどこうとした。しかし、里央の腕は全く動くことなく、あたしを閉じ込めたまま、天使の微笑みを浮かべる。
「どんな状況でも、甘いマスクのままで。それがこれから君が歩んでいく、天使系アイドル。この世界に足を踏み入れるなら、その根性見せてみなよ」
里央のミルキーブラウンの瞳が光り、挑発的に口角をあげた。先程まで優しかった眼差しが、今はジリジリと熱を帯びていく。
周りのスタッフは気づいていないだろう。
微笑みあう天使同士が、バチバチと火花を散らしていることを。
このまま、天使系アイドルRIOの世界に引きずりこまれてたまるか。
反撃してやる、AIKUワールドを見せてあげるわよ。
頬を包んでいた手をミルキーブラウンの髪へ伸ばした。柔らかい髪の毛はふわふわと揺れる。後頭部に手のひらを回して、里央を引き寄せた。
「おおおおお!!!!いいねいいね!!AIKUちゃーーーーーん!!!」
カメラマンが興奮しながら、何度もシャッターを切る。
コツン、おでこが合わさる。
里央が瞬きをすれば、睫毛が触れあった。
ゆっくりと顔を近づけて、鼻先をくっつける。唇が触れそうな距離で止まれば、そのスリルにどくんどくんと心臓が脈打った。
