いつもテレビ越しにKANATAを見ているだけだった。
この街にやってきても、すぐ出会えることはなかった。
大きな看板を見つめて、あたしは高みを目指すと決めたんだ。
デビューしたあたしは手を伸ばせば触れられるほどの距離にいる。そして、KANATAに見つめてもらえる。大勢の人ではなく、1人の女性として瞳に入れてもらえる。田舎町では想像できなかったことが、夢みたいなことが、一つ一つ現実になっていく。
KANATAがすき。だいすき。
あたしは、KANATAにどう見られているんだろう。
可愛く映っているのかな。
「どうしたの?」
首を傾げて、あたしを覗きこむKANATAに、胸がはちきれそうだよ。
「RIOくん、入られまーす!!」
……ん?なんだって?
KANATAで胸いっぱいだったあたしの心臓は、パァン!と破裂したみたい。その衝撃に目を見開いて、スタジオの入り口に目を向ける。ミルキー色の髪がゆらりと揺れて、名探偵メルヘンホームズが姿を現した。
「ウエストウッド所属天使系アイドルのRIOです。本日は宜しくお願いいたします!」
「RIO」
「KANATAくん、おはようございます」
「おはよう。ここ、座りなよ」
「はい。でも、なんでKANATAくんが居るんですか?」
KANATAが引いた椅子に腰を降ろして、里央が目をぱちくりと瞬かせた。
「すぐそこで打ち合わせがあったから、見学しに来たんだ。人気ドリームの仕事ぶりも見ておきたいからね」
「KANATAくんの目的は僕じゃないでしょ?」
「鋭いなぁ。この前もレコーディングスタジオに行ったんだけど、逃げられちゃってさ」
テーブルに肘をついて、手の甲に頬を乗せたKANATAが憂いを帯びた表情でため息を吐き出した。
なんで里央がKANATAと仲良いのよ?
あたしは会話の内容を全く聞かず、KANATA越しにギリギリと歯ぎしりをして里央を睨み付けていた。
