小悪魔DOLL【Ⅰ】




いつもテレビ越しにKANATAを見ているだけだった。

この街にやってきても、すぐ出会えることはなかった。

大きな看板を見つめて、あたしは高みを目指すと決めたんだ。

デビューしたあたしは手を伸ばせば触れられるほどの距離にいる。そして、KANATAに見つめてもらえる。大勢の人ではなく、1人の女性として瞳に入れてもらえる。田舎町では想像できなかったことが、夢みたいなことが、一つ一つ現実になっていく。


KANATAがすき。だいすき。

あたしは、KANATAにどう見られているんだろう。

可愛く映っているのかな。

「どうしたの?」

首を傾げて、あたしを覗きこむKANATAに、胸がはちきれそうだよ。



「RIOくん、入られまーす!!」

……ん?なんだって?

KANATAで胸いっぱいだったあたしの心臓は、パァン!と破裂したみたい。その衝撃に目を見開いて、スタジオの入り口に目を向ける。ミルキー色の髪がゆらりと揺れて、名探偵メルヘンホームズが姿を現した。


「ウエストウッド所属天使系アイドルのRIOです。本日は宜しくお願いいたします!」

「RIO」

「KANATAくん、おはようございます」

「おはよう。ここ、座りなよ」

「はい。でも、なんでKANATAくんが居るんですか?」

KANATAが引いた椅子に腰を降ろして、里央が目をぱちくりと瞬かせた。

「すぐそこで打ち合わせがあったから、見学しに来たんだ。人気ドリームの仕事ぶりも見ておきたいからね」

「KANATAくんの目的は僕じゃないでしょ?」

「鋭いなぁ。この前もレコーディングスタジオに行ったんだけど、逃げられちゃってさ」

テーブルに肘をついて、手の甲に頬を乗せたKANATAが憂いを帯びた表情でため息を吐き出した。


なんで里央がKANATAと仲良いのよ?

あたしは会話の内容を全く聞かず、KANATA越しにギリギリと歯ぎしりをして里央を睨み付けていた。