小悪魔DOLL【Ⅰ】




「このカードを君の友達に配ってくれないか。BIREIDO本店でこのカードを提示すれば、40%OFFのスペシャルカードだよ。君は欲しい物の要望があれば、何でも只であげてしまうけれどね!なんせ、君はプティプティトゥのイメージガールなんだから!なんとっ!!KANATAくんじゃないかっ!!」

「ご無沙汰しております、美麗堂社長。本日はCMの見学で伺わせてもらったのですが、まさか美麗堂社長にお会いできるとは思っておりませんでした」

「嬉しいなぁ!新作のメンズコスメも開発しているんだ。君に広告宣伝を頼みたい!HARUKAくんも元気かね?」

KANATAと握手をした美麗堂社長はご機嫌だ。

穏やかに対応するKANATAは、やっぱり大人の男性だ。仕草も、表情も、優雅で釘付けになる。


世間話をする美麗堂社長に役員が耳打ちをして、やっとサンタクロースはスタジオを出ていった。あたしは青木に連れられてCMセット前に設けられたテーブルの席に腰かけた。KANATAとたくさん話をしたいのに、ポンコツが邪魔をする。


「呼吸が浅いね」

どうしたものかと思い悩んでいるあたしに近づいて、KANATAが呟いた。

ミエルグレージュの瞳があたしを間近で見つめて、陶器のようにツルンと綺麗な白い肌が近づく。やはりKANATAはすごくいい香りがする。だから、深呼吸ついでにいっぱい空気を吸い込んでおいた。

青木は遥か向こうで、スタッフと話をしている。

今が、チャーーーーーンス。

横目で青木の動向を探り、心のあいくがガッツポーズをした。


「6秒吸って、6秒吐いて、それを繰り返したら、シンと、心が凪のように静かになる」

リズムを操るように人差し指を小さく動かして、KANATAは穏やかに口角を上げた。KANATAの指揮に身を任せ、呼吸を意識すると、高ぶっていた気持ちがゆるりと平常に戻っていく。


「不思議、……落ち着いてきました」

「ん、リズムが安定してきたね」

「そういえば……、KANATAくんはどうして撮影があるって知ってたんですか?」

「ウエストウッドの後輩の活躍は、把握しておきたいからね」

「……後輩?」

「そう。君も、僕の大切な後輩」

ミエルグレージュの瞳が細まり、顔を覗き込みように首を傾げるKANATAに、あたしは顔を真っ赤にさせた。

今この時、トップアイドルの瞳を独占しているのは、あたしだ。