……プティ、プティ、プティ。
もう、どうでもいいや。
青木の説明に頭がこんがらがってきた。くるりと振り返れば、KANATAが口角を上げて、小さく手を振ってくれた。
好きっ!!!!!
ホワイトミエルの髪が揺れるのを見つめて、あたしの感情は爆発した。雲に寝っ転がったエンジェルベイビーがあたしの心臓に恋の矢を放つたびに、心臓が爆発する。無意識に口角が上がって、耳の裏が熱くなった。
「BIREIDO代表取締役、美麗堂社長がお越し下さいました!!」
スタッフの大声が響いて、青木がハッと顔を向けた。
「AIKU!何してるんですか!挨拶に行きますよ!」
え?くそだるい。
「美麗堂社長!本日はわざわざお越しいただき、ありがとうございます!今回CM撮影を担当するウエストウッド事務所所属、天使系アイドルAIKUです。そして、私はAIKUのマネージャーの青木と申します。宜しくお願いいたします」
スーツの内ポケットから、名刺を取りだした青木が、両手を添えて、美麗堂社長に渡した。ペコペコ、お辞儀をしている。青木の得意技だ。お偉いさんを見ると急に低姿勢で、ペコペコする技を発揮する。
攻撃力は5のしょぼしょぼ必殺技だ。
「おお。わざわざご丁寧に、どうもありがとうございます。期待のマネージャー青木さんですね。常々お話は伺っております」
ポンコツマネージャーの話なんて、誰がしてんのよ。
美麗堂の社長はプックリ太ったオジサンだった。
この人が化粧会社の社長なんだ。
白髪はカールした猫っ毛で、髭も真っ白で綺麗に揃えられていた。太っていたけど、ドリームのマネージャーの青林に比べたら、とても清潔感があった。肌が艶々だから、そう思うのかもしれない。
なにかに、だれかに、……似てる。
美麗堂社長を見つめていたあたしに、眼鏡の奥にある瞳がこちらを向いた。
「おおう、君が噂の天使系アイドル!ウエストウッド事務所にはいつもお世話になっているのでね。一目君に会いたくて、お邪魔してしまったんだ!」
「先日デビューさせたいただきました、天使系アイドルAIKUです!女性に大人気コスメブランドのCMに出演させていただけて、とても光栄です!」
「なんとまぁ、我が子たちにも君の発言を聞かせてあげたいよ。私にはね、4人の子供がいてね?娘たちは私のお腹の大きさが好みでないらしくてね?だから、私はこう答えてあげたんだよ。『このお腹には、夢と希望が詰まっているんだよ』ってね!ハッハッハッ!美の基準は人それぞれさ!」
あはははははは。
あたしは引きつった頬を上げて、美麗堂社長に合わせて笑った。
あ、わかった。このオジサン、サンタクロースに似てる。
髭と髪を伸ばして、赤い服を着たら完璧だ。
