小悪魔DOLL【Ⅰ】



あたしは今、うっとりと未来のフィアンセを見上げていた。

瞳をとろんとさせて、神を崇めるように両手を組んで、彼だけを見つめる。

ホワイトミエルの髪がさらりと流れて、ミエルグレージュの瞳があたしを見つめ返し、口角がゆっくりと上がって、彼が動くたびにキラキラしたオーラが放たれるの。その魔法の欠片を1つでも多く拾おうと、しっぽを振ってついていった。


「久しぶりだね」

「お久しぶりですっ!KANATA先輩!」

「くん呼びがいいかな」

キャーーーーーーーっ!!!!

あたしの顔を覗き込むように首を傾げると、重ねづけされた2つのネックレスが音を奏でる。衣装とは違うオフのKANATAに、あたしは胸を高鳴らせていた。

このあと、デートに誘われたらどうしよう!

あたしは両手で頬を包み込んで、パチパチと瞬きをしてKANATAを見上げた。

そんなあたしに忍び寄るポンコツの影。


「あいく、何してるんですか!」

あ?くそポンコツ、失せろ。

「CM撮影のスタンバイするんですから、KANATAくんに絡まない!KANATAくん、申し訳ございません。うちのAIKUがご迷惑おかけしまして……」

何が、うちのAIKUよ!!
あんたのモンになったつもりはないわよ!!

「僕もお話したかったし、CM撮影も見学させていただきますね」

キャーーーーーーーっ!!!!

ほら、見なさいよ。
あたしとKANATAは相思相愛なのよ。

「なんすか、その顔……っ!」

声を落とした青木が、あたしの表情を見て毒づいた。

そして、あたしはKANATAに引き離されるように、ポンコツに連れていかれる。ズルズル引きずる青木から逃れようとKANATAに手を伸ばせば、彼の微笑みを浴びた。あたしたちは、ロミオとジュリエットに違いない。

「邪魔者芋虫」

「誰が芋虫っすか!」

化粧品のCM撮影でスタジオ入りすれば、愛しのKANATAが姿を現した。突然のKANATAに、あたしはポンコツ青木を放って、KANATAの元へ駆け寄った。当たり前だ。青木の顔より、KANATAの美しい顔を間近で見たいと思って何が悪いんだ。


「いいですか、あいく。想像以上にチェリーグロスがヒットしているようで、化粧会社からAIKUにCMに出てほしいと直々に指名があったんです。これは秋の新作2色のCMを、2本録りしますから」

容量がパンパンで青木が何を言っているのか、もうわからない。

「あのBIREIDO(美麗堂)の、若い女性に大人気コスメ【プティ・プティトゥ】の秋の新色です!この売上によって、BIREIDOがプティ・プティトゥに力を入れるかどうか決まる重大な役目を背負っているんです!KANATAくんにうつつを抜かしている場合じゃないですよ!」

ちょっと、ポンコツが何語を話してるかわかんない。