小悪魔DOLL【Ⅰ】



ボタンがたくさんありすぎて、わからない。

リモコンを抱え、凝視する。赤いボタンが電源ボタンだということは、わかった。録画機能はどこを押せばいいかわからない。


《モラルハラスメントがあったかどうかが争点になるようです》

「モラハラですね。そんなのあいくのマネージャーになったら、日常茶飯事ですね。俺じゃなかったら耐えられてませんよ。この辛抱強さが俺の魅力なんですよね~。あいくは口は悪いけど、馬鹿正直なところが良いところでもあるし、扱い方がわかればって感じっすねー」

なに独り言言ってんだ。

カレーをあたしの目の前に置きながら、ニュース番組のアナウンサーに語りかけている。


「そうだ、ブログ更新しなくちゃ!」

ブログとは、ネットの日記のようなものだ。

あたしはそれをずいぶん前に、青木に教えてもらって知っている。

「ハン!あんたの日記なんて、誰が読みたいのよ?」

「俺のブログじゃなくて、AIKUのブログをマネージャーである俺が更新してるんすよ。今日の写真を載せるんです」

「へふーん」

「そういえば、今朝とずいぶん服装変わりましたけど。買ったんですか?」

「……ん?何言ってるかわかんない」

「そのパーカーと帽子と眼鏡、買ったんですか?」

「……ん?聞こえない」

「なんで急に耳遠くなってんすか」

リモコンを持ちながら、耳に手を添え聞き返す。そんなあたしに対して、青木が顔をしかめた。

「まぁ、いいですけど。……そうだ!制服コーデの仕事も生かせるかもしれない!AIKUの制服コーデを連載すれば、女子高生受けにもなる!」

いいことを思い付いたと、青木が言った。

制服コーデって言っても、この服は里央の私物だ。それにこのコーデをしたのは優空だ。そんなことも露知らず、青木が指先を滑らせてスマホを操作していた。


「そういえば、前から気になってたんですけど、これ取っといてるんですか?」

スマホから部屋の隅に追いやられた赤い傘に視線を移し、青木が不思議そうに問いかける。シオンからもらった傘だ。ツルに追いかけられて屋上から飛び降りたとき、骨組みがばきばきに折れたんだ。

捨てるのも面倒で、放置していた。

「オブジェ」

「何ドヤ顔してんすか。ただの壊れた傘じゃないですか」

「シオンがくれたやつ。その日に壊れたのよ」

「どんな使い方すれば、あんな風に壊れるんですか!!まったく……。テレビも傘も、シオンさんにはもらってばっかりですね。あいくも何かお返ししたら、どうですか?」

シオンにお返し?

そういえば、シオンはチェリーグロスをほしがっていた。

でも、勝手にプレゼントしてきたシオンに、あたしがお返しをあげる意味がわからないので、青木を無視しよう。