小悪魔DOLL【Ⅰ】



テーブルに座るあたしと目線を合わせようと、ポンコツが向かい合わせに座った。

視界に入るな、ポンコツ。

「そういえば、今日は遅かったですね。どこか寄って帰って来たんですか?」

青木が真っ直ぐとあたしを見据えた。


『天使系アイドル禁止事項、しっかり守ってくださいね!!』

今朝、青木が言った言葉が甦る。

優空と出掛けたことを話したら、青木はあたしを叱りつけるに違いない。コーヒーショップに行っただけで、里央との熱愛報道が出た手前、言えるわけがない。


「別にどこ行っててもいいじゃない!毎日毎日、マネージャーの顔見てると息が詰まるのよ!息抜きぐらいさせなさいよっ!!」

「……別にいいですけど。誰かと行ったんですか?」

やけに質問してくる。

真っ直ぐとあたしを見据える青木から、あからさまに目をそらした。


『放課後、買い物行こうよ!』

そう言ったシオンを思い出した。そうだ。買い物をするはずだったから、シオンと言っておけば怒られなくて済む。

そう思って、口を開いた時だった。


「そういえば、シオンさんから電話来ましたよ?先生に呼び出されて、買い物行けなくてごめんねって伝えてって」

「……そ」

セーフ、言わなくてよかった。

あたしが息を吐き出すと、疑う目付きでじーっと見つめる青木が目の前にいる。

「なによ!」

「……いや、別に」

そう呟いておきながら、まだ見ている。

しかし、息を吐き出した青木がスマホを操作しながら立ち上がった。やっと疑いの目から解き放たれて、ぐったりとテーブルに突っ伏した。

「まぁ、あいくとどっか行きたいって考える人なんて、いませんよね」

「どういう意味よ!!!」

キッチンに向かう青木の背中に向かって、あたしは大声を張り上げた。

「いいですいいです。これ以上詮索しませんから。独りで過ごしたい時もありますもんね」

それはそれで、むかつく!!!

「カレー作りましたから、用意しますね。甘口でいいですよね?」

自分の家のようにキッチンを使う青木を歯軋りをしながら、睨み付ける。当たり前のように、あたしの好みをわかっている青木が苛立たしかった。

「今日は甘口と中辛のブレンド気分だったのに。しょうがないから、甘口でいい」

プイッと顔を背けて、赤いボタンを押して新品のテレビの電源をつけた。カレーをよそう青木が呆れたように笑っていたことなど、あたしは気づくはずもなかった。