テーブルに座るあたしと目線を合わせようと、ポンコツが向かい合わせに座った。
視界に入るな、ポンコツ。
「そういえば、今日は遅かったですね。どこか寄って帰って来たんですか?」
青木が真っ直ぐとあたしを見据えた。
『天使系アイドル禁止事項、しっかり守ってくださいね!!』
今朝、青木が言った言葉が甦る。
優空と出掛けたことを話したら、青木はあたしを叱りつけるに違いない。コーヒーショップに行っただけで、里央との熱愛報道が出た手前、言えるわけがない。
「別にどこ行っててもいいじゃない!毎日毎日、マネージャーの顔見てると息が詰まるのよ!息抜きぐらいさせなさいよっ!!」
「……別にいいですけど。誰かと行ったんですか?」
やけに質問してくる。
真っ直ぐとあたしを見据える青木から、あからさまに目をそらした。
『放課後、買い物行こうよ!』
そう言ったシオンを思い出した。そうだ。買い物をするはずだったから、シオンと言っておけば怒られなくて済む。
そう思って、口を開いた時だった。
「そういえば、シオンさんから電話来ましたよ?先生に呼び出されて、買い物行けなくてごめんねって伝えてって」
「……そ」
セーフ、言わなくてよかった。
あたしが息を吐き出すと、疑う目付きでじーっと見つめる青木が目の前にいる。
「なによ!」
「……いや、別に」
そう呟いておきながら、まだ見ている。
しかし、息を吐き出した青木がスマホを操作しながら立ち上がった。やっと疑いの目から解き放たれて、ぐったりとテーブルに突っ伏した。
「まぁ、あいくとどっか行きたいって考える人なんて、いませんよね」
「どういう意味よ!!!」
キッチンに向かう青木の背中に向かって、あたしは大声を張り上げた。
「いいですいいです。これ以上詮索しませんから。独りで過ごしたい時もありますもんね」
それはそれで、むかつく!!!
「カレー作りましたから、用意しますね。甘口でいいですよね?」
自分の家のようにキッチンを使う青木を歯軋りをしながら、睨み付ける。当たり前のように、あたしの好みをわかっている青木が苛立たしかった。
「今日は甘口と中辛のブレンド気分だったのに。しょうがないから、甘口でいい」
プイッと顔を背けて、赤いボタンを押して新品のテレビの電源をつけた。カレーをよそう青木が呆れたように笑っていたことなど、あたしは気づくはずもなかった。
