いつも温厚な優空の瞳に、憎悪が渦巻いた。
「何人もの人が、記者たちに潰されたのを、俺は知ってる」
「それって、スキャンダル?」
「そうだね、スキャンダル」
「この前、ネットニュースに載ったみたいなこと?」
RIOとのスキャンダルがネットニュースに載ったことがあった。
「あれはファンの騒ぎがニュースになっただけで、信憑性もないから、すぐに噂も無くなったでしょ?1番怖いのはワイドショーと週刊誌が結託して、それを見た視聴者がSNSで炎上させること。ネットの中には嘘も多いよ、憶測だけで炎上することもある」
スマホ画面の四角い世界には何でもありだけど、たくさんの嘘も詰まってるみたい。あたしには、優空が言っている違いが、よくわからなかった。
「でも、あいくは……」
優空が笑顔を向けると、ハニーブラウンの瞳から闇が消えた。キラキラ輝く瞳で、優空が言ったんだ。その表情は王子様のように美しかった。
「全てを味方にしちゃいなよ。記者たちもうまく利用して、この街みたいに全国をAIKU一色に染めればいいんだよ。誰も文句が言えないくらい、トップアイドルになってさ」
「狭い」
「……え?」
「全国なんて、狭すぎる」
あたしは行き交う人々を見つめて、力強く言った。
「世界を、あたし一色にする」
あたしの発言に、優空がクスクス笑った。
「あいくらしいね」
繰り返し流される、あたしのデビューシングル。
春風が吹き荒れるこの日が、行き交う人々の記憶に刻まれる。
新しく出来た好きな人や、別れを告げた恋人や、仕事に向かう女性も、家族のもとへ帰る男性も、ここにいる全ての人々の記憶とともに、あたしのデビューシングルが刻まれる。
それに気づかせてくれたのは、優空だった。
天使系アイドルとしてデビューした素晴らしさを教えてくれたのは、優空だった。
そして、あたしたちは約束した。
「もっと、高みを目指そう」
きらびやかな街並みの上で、見えるはずのない一番星が輝いた気がした。
