小悪魔DOLL【Ⅰ】



「なんであたしのファンをラブべあって呼ぶのよ?」

「【ラブべあ】の原型は、【あいくマニア】のことみたいだよ?」

「あいくマニア?全然、ラブべあと関係ないじゃない」

「あいくマニアを、略して【あいくま】。それを英語にして、loveとbear。だから、【ラブべあ】って、ネットに書いてある」

ネットって、何でもありなの?

スマホを操作すれば、何でも出来るんだ。この前ツルに追いかけられたとき、樹理は由依の居場所を知ることも出来たし、シオンはファンたちの声を音読していた。もしかしたら、魔法のアイテムなのかもしれない。


「誰がそんなの作ったのよ?」

「ファンたちの愛称を作るのは、アイドル本人だったり、事務所だったり、ファンたちだったり、色々だよ」

「あのポンコツ青木の仕業ね!」

アイツ、あたしを売るためなら、変な名前も流行らせようとするに違いない。

「それがさ。あいくのファンの愛称を作ったのは、事務所でもファンでもないみたい」

優空の声が低くなった。

「じゃぁ、誰よ?」

「記者だよ」

「……記者?」

言葉を繰り返す。

優空の顔が歪んで、唇を噛み締めた。先ほどまでにこやかだった王子の表情が変わり、あたしは優空をまじまじと見つめた。

「あいく、気を付けたほうがいい。きっと、記者たちの次の獲物はあいくになるかもしれない」

「次の獲物?何を気を付けるのよ?」

「まぁ、青木さんの言うとおりしてれば、何も問題はないと思うけど。彼らはどんなことでも記事にするからね」

藍色に変色していく空。

人混みに目を向けて、優空が静かに言った。

あたしたちの存在を気にすることもなく、人々は行き交いあう。


「彼らは人を高みまで登らせて、一気に叩き落とすんだ……」

ハニーブラウンの瞳の奥が闇に蝕まれていった。