「なんであたしのファンをラブべあって呼ぶのよ?」
「【ラブべあ】の原型は、【あいくマニア】のことみたいだよ?」
「あいくマニア?全然、ラブべあと関係ないじゃない」
「あいくマニアを、略して【あいくま】。それを英語にして、loveとbear。だから、【ラブべあ】って、ネットに書いてある」
ネットって、何でもありなの?
スマホを操作すれば、何でも出来るんだ。この前ツルに追いかけられたとき、樹理は由依の居場所を知ることも出来たし、シオンはファンたちの声を音読していた。もしかしたら、魔法のアイテムなのかもしれない。
「誰がそんなの作ったのよ?」
「ファンたちの愛称を作るのは、アイドル本人だったり、事務所だったり、ファンたちだったり、色々だよ」
「あのポンコツ青木の仕業ね!」
アイツ、あたしを売るためなら、変な名前も流行らせようとするに違いない。
「それがさ。あいくのファンの愛称を作ったのは、事務所でもファンでもないみたい」
優空の声が低くなった。
「じゃぁ、誰よ?」
「記者だよ」
「……記者?」
言葉を繰り返す。
優空の顔が歪んで、唇を噛み締めた。先ほどまでにこやかだった王子の表情が変わり、あたしは優空をまじまじと見つめた。
「あいく、気を付けたほうがいい。きっと、記者たちの次の獲物はあいくになるかもしれない」
「次の獲物?何を気を付けるのよ?」
「まぁ、青木さんの言うとおりしてれば、何も問題はないと思うけど。彼らはどんなことでも記事にするからね」
藍色に変色していく空。
人混みに目を向けて、優空が静かに言った。
あたしたちの存在を気にすることもなく、人々は行き交いあう。
「彼らは人を高みまで登らせて、一気に叩き落とすんだ……」
ハニーブラウンの瞳の奥が闇に蝕まれていった。
