「なんでエスプレッソなんて注文したんですか!カフェモカを注文すれば済むことなのに!」
「何よ!その言い方!」
あたしだって、プレミアムカフェモカ注文する気だったわよ!それなのに、邪魔が入ったんだ。
青木はぶそくるあたしを見てため息を吐き出し、レジ上の小銭をかき集める。
「まったく、カフェモカも1人で買えないんですか?」
「買えるわよ!!何も知らないくせに!!」
「はいはい、わかりましたよ。サイン会の打ち合わせが入りましたから、今から事務所行きますよ」
「待ってよ、カフェモカは!?」
「もう時間が無いんですよ。カフェモカはまた今度。いいですか?これからは、レジで「カフェモカください」って言えばいいんですから、他の商品は注文しないでくださいよ」
「そんなこと言われなくても、わかってるわよ!!」
「ですよね。一応、確認として言っただけですから。すみません。ご迷惑をおかけしました」
食ってかかるあたしから目を離して、青木が店員に向かってペコリとお辞儀をした。店員が先程の態度とはうってかわってボソボソと返事をし、顔を隠すように黒いキャップを深く被り直すのを見た。
「あいく、行きますよ」
「触んな!ポンコツ!!」
あたしはプリプリしながら、歩きだした。
青木はエスプレッソを飲んだように、苦い表情であたしの後ろ姿を見つめていた。
