「それ、AIKUの分」
カップを口に近づけながら、HARUKAがレジ上のもうひとつをアゴで差した。
なに勝手に人の分まで、注文してんのよ!!
「あたし、カフェモカがいいんですけど」
「飲んでみろって」
エスプレッソを見つめた不満たらたらのあたしに、HARUKAが笑って言った。
なんでホットのコーヒー飲まなきゃいけないのよ。
あたしはカップを両手で持ち、口に近づけた。芳醇なコーヒーの香りが、漂った。いい香り。ゆっくりと口にエスプレッソコーヒーを流し込んだあたしは、その味に目を見開いた。
「……にっが!!!」
やっぱり、飲み物じゃない!!
美味しそうな香りを漂わせているくせに、騙された!舌が液体のどこを探しても、甘味に遭遇することなく、出会うのは苦味しかない!!もう迷路だ!!出口が見つからない!!
変なモノ、飲ませてんじゃないわよ!
真っ黒な液体を見つめて、舌を出した。
あまりの苦さに顔が歪む。
あたしはエスプレッソコーヒーを表情ひとつ変えずに、飲み干すHARUKAを見上げた。
「どう?お子ちゃまには、早かったかな?」
HARUKAがからかうように、笑った。
オレオ色の髪色がさらりと揺れれば、HARUKAの顔が数センチの距離に近づいた。
突然の至近距離に、目を見開いた。
