小悪魔DOLL【Ⅰ】



「それ、AIKUの分」

カップを口に近づけながら、HARUKAがレジ上のもうひとつをアゴで差した。

なに勝手に人の分まで、注文してんのよ!!

「あたし、カフェモカがいいんですけど」

「飲んでみろって」

エスプレッソを見つめた不満たらたらのあたしに、HARUKAが笑って言った。

なんでホットのコーヒー飲まなきゃいけないのよ。

あたしはカップを両手で持ち、口に近づけた。芳醇なコーヒーの香りが、漂った。いい香り。ゆっくりと口にエスプレッソコーヒーを流し込んだあたしは、その味に目を見開いた。


「……にっが!!!」

やっぱり、飲み物じゃない!!

美味しそうな香りを漂わせているくせに、騙された!舌が液体のどこを探しても、甘味に遭遇することなく、出会うのは苦味しかない!!もう迷路だ!!出口が見つからない!!

変なモノ、飲ませてんじゃないわよ!

真っ黒な液体を見つめて、舌を出した。

あまりの苦さに顔が歪む。

あたしはエスプレッソコーヒーを表情ひとつ変えずに、飲み干すHARUKAを見上げた。


「どう?お子ちゃまには、早かったかな?」

HARUKAがからかうように、笑った。

オレオ色の髪色がさらりと揺れれば、HARUKAの顔が数センチの距離に近づいた。

突然の至近距離に、目を見開いた。