小悪魔DOLL【Ⅰ】



計算もなく撫でられた頭に、無意識に口角が上がっていた。お兄ちゃんみたい。オレオブラウンの瞳が向けられ、いたずらに笑うHARUKAを見上げ、あたしはそう思った。

「2部が始まるまで、休憩しに来たんだよ。そしたら、AIKUいるからラッキーと思ってさ」

何がラッキーなのか、よくわからない。


「そういえば、スプリングフェスティバルって言えば、HARUKAくんとKANATAくんが一年に一回共演するイベントですよねー」

「そういや、そうだな」

「【CRO2SCROWN2】復活すればいいのに……」

「どうだろうな?」

「まぁ、HARUKAくんもKANATAくんも個々で活躍してるし、他の二人も集まるのは大変ですけど。【CRO2SCROWN2】は俺らの憧れですからね。お待たせしましたー!エスプレッソです!」

店員がエスプレッソをレジに置いた。


真っ黒だ。

こんなもの、飲み物じゃない。

中身を覗きこみ、あたしはそう思った。

「それでは、ちょうどお預かりしまーす!」

あたしがレジ机に置いた小銭の半分を奪い取り、店員が言った。

ちょっと、待ちなさいよ。

置かれたエスプレッソの1つを手にもって、HARUKAがあたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。


「AIKU、ごちそうさま~!」

はぁーーーーー!?

おっさん、なにほざいちゃってんの!?

そして、あたしは思い出していた。

『AIKUいるからラッキーと思ってさ』

HARUKAが先程発した言葉を。


コイツ糞じゃん!!

先輩のくせに後輩の金奪い取るなんて、ただの糞じゃん!!

全然、お兄ちゃんじゃない!!!