「俺はフェスを見に行けないから、スマホでチェックしてただけだよ。ツルってのは、アイドルを困らせるほど追っかける子達のことを言うんだよ。俺は、善良なファン」
「仕事サボってたくせに、偉そうに」
「そうだった。それで、ご注文は?」
「プレミアムカフェモ……」
「エスプレッソ、2つ」
あと一文字だったのに!!
隣に割り込んで来た男が指を2本たてて、注文した。あたしは眉間にシワを寄せて見上げれば、オレオ色の髪がさらりと揺れた。
そして、目を見開いた。
「HARUKAくん!!」
そう叫んだのは、店員だった。
「よう、しっかりカフェ店員やってんじゃん」
「当たり前ですよ。HARUKAくんから『やれ』って言われたら、断れないですからね」
何が当たり前だ。さっきまでスマホいじって、寝てたじゃない。
「エスプレッソ2つですね。かしこまりました!」
くるりと背を向けてエスプレッソを準備しはじめる店員を確認して、HARUKAがあたしを見下ろした。
「俺の後輩」
店員を指差して、HARUKAがそう言った。
「AIKU、初ステージお疲れさま」
HARUKAがあたしの頭に手をのせ、くしゃくしゃと撫でた。まるで犬をあやすような撫でかただったけど、嫌な気持ちはしなかった。
