小悪魔DOLL【Ⅰ】



「それは、オレがお答えしよう」

「げー!性悪がいる!!里央くんの隣に座るなよぉ!!」

由依がまるで博士のようにそう言って、樹理はあたしを見つけてあからさまに顔を歪めた。

「喧嘩の原因は、斗愛くんが立ち位置間違ったことだよ」

「間違ったの?」

「おまえがわかるようなヘマ、ボクたちはしないよぉーだ。同じレベルだと思わないでくれる?」

「だまれ、くそ猫。ねこじゃらしでも食ってろ」

「……なっ!!」

「最後らへん、斗愛くんセンターだったけど。あそこのセンターは里央くんだったし、全員でダンス揃えるところだったからな。ドリームのフォーメーションは変わらねえけど、里央くんと斗愛くんの立ち位置だけ違ったんだよ」

「でも、なんで里央じゃなくて、優空が怒るのよ?」

「優空は謹慎がとけるまで、歌もダンスもこの日のために頑張って来たんだよ。だから、余計完璧なもんにしたかった」

足に消臭スプレーを吹き掛ける由依が、そう言った。


……謹慎。

今年の2月、公園で初めて優空に出逢ったとき。

あの時、優空は言っていた。

『青木さん、俺謹慎とけるかな?』

自嘲した笑い声が蘇る。


「謹慎になったのは、優空自身のせいだから。ボクは同情なんてしないけどねぇ」

「お前はなんでそんなことしか言えないわけ?」

「由依だって、優空にばっか味方して!ボクと優空、どっちの味方なわけ!?」

「優空」

即答した由依に、猫が発狂した。

うるさい。


雑誌に視線を落とした里央は、斗愛優空の喧嘩にも、由依樹理の喧嘩にも入ることはなく、ペラペラと雑誌をめくっていた。あたしは里央の隣に座って、斗愛優空の喧嘩を見上げていた。

よくもこんな仲が悪くて、ステージ上でファンを虜に出来たものね。