小悪魔DOLL【Ⅰ】



「さぁ?知らない」

里央が興味無さそうに、雑誌に視線を落とした。

上の衣装だけ脱いでTシャツのラフな格好の里央は2人が喧嘩しているより、雑誌の内容の方が興味があるみたい。

「突っかかってくんなよ」

「俺は最高のパフォーマンスをしたかったって言ってるの」

「最高のパフォーマンス?てめえのせいで、そのパフォーマンスすんのが遅れたんじゃねえの?」

「……わかってる。だからこそ、完璧にやりたかったんだよ!」

「俺がセンターのほうが、盛り上がってたけどな?」

「今日だけだよ。次は成功なんてしない」

あんな優空、見たことない。

いつも王子のように柔らかいオーラを纏う優空が、斗愛を睨みつけた。


「メルヘンあいくの見解によれば……」

眉間をトントン人差し指で叩いて、呟く。

そんなあたしに、里央が目を向ける。

「斗愛が優空に喧嘩ふっかけたのは、間違いないわね。いつも温厚な王子様があんなに怒るなんて、見たことないもの。ねぇ、助手?」

あたしの言葉遣いに、里央が顔をしかめた。

先程までファンに天使の微笑み向けてたくせに。

なんなの、その顔。


「助手って、なに」

「メルヘンあいくと助手」

「それ、僕のことディスってんの?」

深夜ドラマ【メルヘンホームズと助手】

里央主演のドラマだ。だっさい、名前。シオンがネットニュースを読んだ時に知った情報だ。

「ねー、なんで喧嘩になったの?」

「あいく」

突然スイッチを切り替えて、天使の微笑みをむける里央に、口を閉ざす。


「世の中知らないほうがいいことだって、あるんだよ」

なにそれ。答えるのがだるいだけでしょ。このくそ天使。