「さぁ?知らない」
里央が興味無さそうに、雑誌に視線を落とした。
上の衣装だけ脱いでTシャツのラフな格好の里央は2人が喧嘩しているより、雑誌の内容の方が興味があるみたい。
「突っかかってくんなよ」
「俺は最高のパフォーマンスをしたかったって言ってるの」
「最高のパフォーマンス?てめえのせいで、そのパフォーマンスすんのが遅れたんじゃねえの?」
「……わかってる。だからこそ、完璧にやりたかったんだよ!」
「俺がセンターのほうが、盛り上がってたけどな?」
「今日だけだよ。次は成功なんてしない」
あんな優空、見たことない。
いつも王子のように柔らかいオーラを纏う優空が、斗愛を睨みつけた。
「メルヘンあいくの見解によれば……」
眉間をトントン人差し指で叩いて、呟く。
そんなあたしに、里央が目を向ける。
「斗愛が優空に喧嘩ふっかけたのは、間違いないわね。いつも温厚な王子様があんなに怒るなんて、見たことないもの。ねぇ、助手?」
あたしの言葉遣いに、里央が顔をしかめた。
先程までファンに天使の微笑み向けてたくせに。
なんなの、その顔。
「助手って、なに」
「メルヘンあいくと助手」
「それ、僕のことディスってんの?」
深夜ドラマ【メルヘンホームズと助手】
里央主演のドラマだ。だっさい、名前。シオンがネットニュースを読んだ時に知った情報だ。
「ねー、なんで喧嘩になったの?」
「あいく」
突然スイッチを切り替えて、天使の微笑みをむける里央に、口を閉ざす。
「世の中知らないほうがいいことだって、あるんだよ」
なにそれ。答えるのがだるいだけでしょ。このくそ天使。
