「挨拶なら、ステージ裏で済ませたわよ」
あまり話してないけど、ポンコツにはバレまい。
「歌う前に会っただけでしょう?しっかり、挨拶するんです。あいくのことだから、話してもないんでしょうけど」
なぜ、バレた。
「とにかく、全員じゃなくて、主力メンバーだけですから。ドリームの挨拶が終わったら、帰れますから」
「どっちも、いやだ!」
「え?」
「ドリームに挨拶行きたくないし、帰りたくもない!」
「帰らなきゃだめなんですよ。楽屋は時間割されてるし、ここにいたら邪魔なだけなんです!」
「KANATAが来るまで待ってる!!」
その言葉に、青木がため息を吐き出した。
「KANATAくんは、3時間経たないと来ないと思いますよ。その間、ここにいたら、他のスタッフやアイドルたちの邪魔になります」
「はぁ!?なんでそんな来ないのよ!!」
「前も説明しましたけど、スプリングフェスティバルは1部と2部で構成されてるんです。出演者も変わって1部はルーキーアイドル、2部はベテランアイドル。KANATAくんは2部の大トリを務めますから」
青木が淡々と説明する。あたしは唇を噛み締めて、青木を睨み付けた。
「そんな顔しても、どうにもなりませんよ」
黙れ、ポンコツ。
「1部のトリが、AIKUだったんです。お客さんも総入れ換えになり、これから2部の準備が始まります。AIKUが1部のトリを務めたことは、KANATAくんの耳にも入ってるんじゃないですか?」
あたしが1部のトリで、KANATAが2部の大トリ。
これは、運命でしかない。
「KANATAくんが大トリに集中できるよう、考えてあげられることも、結婚するための第一歩になると、俺は思いますけどね」
「……今日は、KANATAのことを考えて、帰ることにする。だから、車用意して」
「ちょっと、待ったー!!!!」
歩き出すあたしの二の腕を掴む青木。
「ドリームの挨拶行ってから帰るんです!!」
「いーやーだぁ!!!」
