小悪魔DOLL【Ⅰ】



「挨拶なら、ステージ裏で済ませたわよ」

あまり話してないけど、ポンコツにはバレまい。

「歌う前に会っただけでしょう?しっかり、挨拶するんです。あいくのことだから、話してもないんでしょうけど」

なぜ、バレた。

「とにかく、全員じゃなくて、主力メンバーだけですから。ドリームの挨拶が終わったら、帰れますから」

「どっちも、いやだ!」

「え?」

「ドリームに挨拶行きたくないし、帰りたくもない!」

「帰らなきゃだめなんですよ。楽屋は時間割されてるし、ここにいたら邪魔なだけなんです!」

「KANATAが来るまで待ってる!!」

その言葉に、青木がため息を吐き出した。


「KANATAくんは、3時間経たないと来ないと思いますよ。その間、ここにいたら、他のスタッフやアイドルたちの邪魔になります」

「はぁ!?なんでそんな来ないのよ!!」

「前も説明しましたけど、スプリングフェスティバルは1部と2部で構成されてるんです。出演者も変わって1部はルーキーアイドル、2部はベテランアイドル。KANATAくんは2部の大トリを務めますから」

青木が淡々と説明する。あたしは唇を噛み締めて、青木を睨み付けた。

「そんな顔しても、どうにもなりませんよ」

黙れ、ポンコツ。

「1部のトリが、AIKUだったんです。お客さんも総入れ換えになり、これから2部の準備が始まります。AIKUが1部のトリを務めたことは、KANATAくんの耳にも入ってるんじゃないですか?」

あたしが1部のトリで、KANATAが2部の大トリ。

これは、運命でしかない。

「KANATAくんが大トリに集中できるよう、考えてあげられることも、結婚するための第一歩になると、俺は思いますけどね」

「……今日は、KANATAのことを考えて、帰ることにする。だから、車用意して」

「ちょっと、待ったー!!!!」

歩き出すあたしの二の腕を掴む青木。


「ドリームの挨拶行ってから帰るんです!!」

「いーやーだぁ!!!」