小悪魔DOLL【Ⅰ】



ステージから出ても、会場の歓声は鳴りやまない。

あたしはふらつきながら、ステージ裏の階段を降りていた。スタッフたちが行き交い、音声スタッフがいつマイクとイヤモニを回収したのかさえ、わからなかった。


頭がボーッとして、足に力が入らない。

高いヒールを滑らせ、階段を踏み外した。気づいた時には世界が反転して、体を支えようとした手は空を掴んだ。そんなあたしの体をボスッと受け止め、後ろから体を包み込む温もり。


「あいく!大丈夫ですか!?」

「青木」

そんな慌てて来て、そんな心配した表情で、……保護者みたい。

青木の顔がおかしくて、思わず笑った。

その表情を見て、青木は安堵して顔の筋肉がほぐれたみたい。いつものポンコツな表情に戻っていた。そして、あたしは青木に、自信満々に言ってやるんだ。


「あんたの担当アイドル、やるでしょ?」

「はい、さすがです」

「いつまで触ってんのよ。さっさと離れなさいよね」

「……な!俺はあいくが倒れそうになったから、支えようと思っただけで!」

「喉乾いた」

「はい、どうぞ。今から、挨拶回りに行きますから」

青木がため息を吐き、スポーツドリンクを手渡して言った。水筒のストローを口に含む。ゴクリと飲み込んだあたしは、ポンコツを睨み付けた。


「挨拶回りは、本番前に済ませたじゃない」

「まだ、ウエストウッドドリームの皆さんに挨拶行けてないですよ。デビューはしてないですが、AIKUの先輩になるんですから、挨拶に行くんです」

ドリームーーーーー!!!

「いやだ。だるい」

「そんな理由、通用しません」

「あ、足首くじいて、もう歩けない」

「そんな嘘、通用しません」

黙れ、くそポンコツ。