ステージから出ても、会場の歓声は鳴りやまない。
あたしはふらつきながら、ステージ裏の階段を降りていた。スタッフたちが行き交い、音声スタッフがいつマイクとイヤモニを回収したのかさえ、わからなかった。
頭がボーッとして、足に力が入らない。
高いヒールを滑らせ、階段を踏み外した。気づいた時には世界が反転して、体を支えようとした手は空を掴んだ。そんなあたしの体をボスッと受け止め、後ろから体を包み込む温もり。
「あいく!大丈夫ですか!?」
「青木」
そんな慌てて来て、そんな心配した表情で、……保護者みたい。
青木の顔がおかしくて、思わず笑った。
その表情を見て、青木は安堵して顔の筋肉がほぐれたみたい。いつものポンコツな表情に戻っていた。そして、あたしは青木に、自信満々に言ってやるんだ。
「あんたの担当アイドル、やるでしょ?」
「はい、さすがです」
「いつまで触ってんのよ。さっさと離れなさいよね」
「……な!俺はあいくが倒れそうになったから、支えようと思っただけで!」
「喉乾いた」
「はい、どうぞ。今から、挨拶回りに行きますから」
青木がため息を吐き、スポーツドリンクを手渡して言った。水筒のストローを口に含む。ゴクリと飲み込んだあたしは、ポンコツを睨み付けた。
「挨拶回りは、本番前に済ませたじゃない」
「まだ、ウエストウッドドリームの皆さんに挨拶行けてないですよ。デビューはしてないですが、AIKUの先輩になるんですから、挨拶に行くんです」
ドリームーーーーー!!!
「いやだ。だるい」
「そんな理由、通用しません」
「あ、足首くじいて、もう歩けない」
「そんな嘘、通用しません」
黙れ、くそポンコツ。
