小悪魔DOLL【Ⅰ】



それでも、あたしの心は清らかだった。

このステージに立ち、きらびやかな衣装を着て、KANATAみたいに大勢を目の前にして、歌いきったんだ。最後まで、あたしの歌を聞いてくれたことが、何より幸せだった。


「ありがとう」

心の底からそう思ったことは、初めてだった。

深々とお辞儀をして、笑顔を向ける。

あたしは今、初めて本物の天使系アイドルになった。

ミルクティー色の髪が揺らめき、笑顔を向けたあたしに、静寂していた観客席が爆音のような歓声を響かせた。止まっていた時が、まるで誰かが再生ボタンを押したように一斉に動き出す。


「AIKUーーーーー!!!」

轟いた歓声があたしの体を包みこみ、観客があたしの名前を呼んだ。揺らめく観客席で、キラキラ飾り付けられたカンペを振る。


【LOVE Uちょうだい♡】

【エアハグして★】

【遠吠えちょうだい】

【指差してm9(*゚д゚*)】

【お手ふりちょうだい】

【家畜にしてください!!!】

【何でもいいからファンサくれ】


たくさんのカンペを目にして、彼らに笑顔を向ける。全てに答えることは出来ないけれど、あたしは観客に向かって手を振った。そして、黄色い歓声に包まれながら、ステージをあとにしたんだ。

あたしは天使系アイドルとして、この世界に飛び込んだ。