小悪魔DOLL【Ⅰ】



あたしは目を閉じた。

スポットライトの下、観客の視線を浴びて、ゆっくりと目を閉じた。

手のひらを胸に添えて、最後のフレーズを歌うんだ。


《♪ love you...》

《love you...》

《love you... 》


目を開く。

ステージは白い羽根に包まれて、ふわふわの雲の上にいるみたい。まだ地上に降りたっていない羽根たちが、観客の上で舞っていた。彼らに向かって、あたしは最後の歌声を響かせる。


《♪ 「 my sweet honey... 」 》


あたしは歌い終えた。

余韻に浸るように、ゆっくりとマイクを下ろし、

観客席に目を向けた。

誰も歓声を上げる者はいなかった。

ウエストウッドドリームの時のように、団扇を見せつける者もいなかった。


誰1人、動かなかった。

歌っていたとき、観客席が沸き立ったこと。

目を向けたとき、うちわを振り回していたこと。

もしかしたら、自分の世界に酔っていたあたしが、そう錯覚していただけなのかもしれない。