あたしは目を閉じた。
スポットライトの下、観客の視線を浴びて、ゆっくりと目を閉じた。
手のひらを胸に添えて、最後のフレーズを歌うんだ。
《♪ love you...》
《love you...》
《love you... 》
目を開く。
ステージは白い羽根に包まれて、ふわふわの雲の上にいるみたい。まだ地上に降りたっていない羽根たちが、観客の上で舞っていた。彼らに向かって、あたしは最後の歌声を響かせる。
《♪ 「 my sweet honey... 」 》
あたしは歌い終えた。
余韻に浸るように、ゆっくりとマイクを下ろし、
観客席に目を向けた。
誰も歓声を上げる者はいなかった。
ウエストウッドドリームの時のように、団扇を見せつける者もいなかった。
誰1人、動かなかった。
歌っていたとき、観客席が沸き立ったこと。
目を向けたとき、うちわを振り回していたこと。
もしかしたら、自分の世界に酔っていたあたしが、そう錯覚していただけなのかもしれない。
