小悪魔DOLL【Ⅰ】



「久しぶり、AIKU?」

その声に顔を上げる。

ベビーブルー色の衣装を身にまとった斗愛が、隣にスタンバイした。目を見開いたあたしに、挑発的に口角を上げる。


「おはよう、AIKU」

「そのドレス、素敵だね」

斗愛越しに、同じ衣装の里央と優空が微笑みかけた。

……待って、待って。

状況がうまく把握できないあたしなどお構いなしに、また変な奴等が集まり出す。


「やっべー!!右足、靴下履き忘れた!!」

「由依!ベルトもしっかりしてよ!!」

衣装を乱して駆けてくる由依と、衣装を着こなした樹理がいる。



「天使系アイドルねぇ……、趣味悪」

前を見据えた斗愛が、鼻で笑った。

「誰に向かっていってるの、それ」

天使系アイドルの里央がじろりと、斗愛を睨んだ。

「……揺れる瞳は……誰を見つめて」

王子のような横顔の優空が、歌詞を口ずさむ。

「終わったら、絶対右足だけ臭くなるやつだ」

ベルトをカチャカチャ直しながら、由依がぼやく。

「なんで靴下履き忘れるかわかんなぁ~い」

由依の右足を見据えて、しかめ面の樹理が言った。


「5秒前!5、4、3」

スタッフの声がした。

里央が衣装を整える。優空が胸を掴み、天を見上げた。

「2」

目の前のスタッフが、扉に手をかけた。

隣の斗愛がゆっくりとあたしに目を向ける。ココアブラウンの瞳が冷たく光った。

「1」

扉が開かれる。

突然開かれた扉の向こうは、席のペンライトが星空のように浮かぶ。


「天使に化けるなんて、見物だな?」

隣にいた斗愛が低い声で唸ると、暗闇の中に飛び込んで行った。

隣にいた斗愛を見上げていたあたしは、他のメンバーがまっすぐと前を向いて、開かれた扉の向こうに飛び出して行くのを、見つめていた。

彼らの残像が目に焼き付いた。