時計の針は、0時を回ろうとしていた。
今宵の宮殿では、オーケストラの音にあわせて、着飾った公女や公子舞い踊る。この中であたしだけがここから逃げ出すように、ドレスを持ち上げ、走り出す。ガラスの靴を残したまま、階段を駆け下りた。
時が迫っていた。
楽しい時間は終わりを告げて、解けてしまうから。
どうか誰にも気づかれないように、逃げなくちゃ。
「AIKU」
追いかけて来た声に、振り返った。
0時の鐘が鳴り響く。
とけるはずの魔法が、あたしの体を包み込んだように、夢の世界に引きずり込まれ、向けられた瞳に抗うことは出来ない。彼はあたしをプリンセスに指名するように、手を伸ばした。
そして、
「僕を選んでよ」
切なくそう懇願した。
痛いくらいに激しく高鳴る心臓は、夢ではないと報せていた。
