小悪魔DOLL【Ⅰ】



「どの時代もガキはガキらしくしてればいいんだよ。俺もKANATAもドリームの時は、何回マネージャーに怒られたか数えきれねーもんな」

KANATA。その名前に、あたしは背もたれから離れて身を乗り出した。そのせいで、シートベルトが首に食い込んだ。由依が身を乗り出せばカフェオレ頭の上に、樹理が顔を乗せてHARUKAを見下ろした。

ホワイトミエルの髪を揺らしてニッコリと笑うKANATAは、どこからどう見ても王道アイドル。誰にでも優しくて、とってもかっこいいのが、KANATAだ。そんなKANATAがHARUKAとともに、何に対して怒られてたんだろう?


「まぁ、それでお前らが干されても自己責任で、俺は一切関与しねえけど」

「えーーーーーーーーー!!!!」

由依樹理の声が重なった。

「HARUKAくん、見捨てるんすか!オレらのこと!」

「多少は、悲しむよ」

「なんちゅー先輩だよ!」

「ボク、クソ王子みたいに干されるのは、やだよぉ!」

「樹理、言い方傷つくんだけど……」

「あたし、優空くんが干されても、ずっとずっと優空くんのファンだから!!」

うそこけ。あんた、新しいドリームが現れたら、すぐ乗り替える尻軽女じゃない。


「そりゃ見捨てるだろ。俺の立場を脅かす存在は、小さい芽のうちに摘んどかなきゃいけねーからな?」

HARUKAが冗談まじりにそう言った。後ろのドリーム達が大げさなリアクションをすることを、心底楽しんでいるみたい。

不思議だった。HARUKAが口を開けば、自然と全員が黙って耳をそばだてる。オレオブラウンの瞳がどこを向いているのか、どんな表情で話しているのか。ポンコツ青木には絶対抱かない感情を、HARUKAは自然と掘り起こすんだ。

HARUKAは、魔法使いなのかもしれない。

声や言葉を、自在に操つるの。

声のトーンや、イントネーションを変えて、聞いてほしい人にだけ、言葉を届ける。

そして、彼は静かに口を開いた。


「次世代のトップアイドルを摘むのは、まだ惜しいかな?」

オレオブラウンの瞳にあたしが映る。

まるであたしにだけ聞こえるように。