婚約破棄しておいて元サヤを望むって頭おかしいんですか?(笑)

「フランソワ、お前との婚約は破棄する!何故ならお前の妹であるアンジュリカこそ、私の運命の相手であるからだ!さらにこれならば政略結婚に問題は無い、完璧だろう?」




 ……何でこいつドヤってるんですかね。ここまでコケにされるとは思いませんでしたよ……




「まぁお前も私に振られて悲しいだろうが、頑張っていい相手を見つけてくれ、ほらこんなに優しかった元婚約者に感謝をしてな」



 はぁ?どこまでこいつ自惚れてるの??????????????



 今ここのどこに優しい要素があったのか!



 元々単なる政略結婚に惚れたもクソも無いのに、貴族の義務に過ぎないのに、自分が愛されていると錯覚して、さらにだ、そこまでは百歩譲って許そう。

 婚約破棄をしておいて、なお自分が優しいだの、好かれているって思い込むのは、厚かましいを天元突破しているでは無いか!



 仮に私がお前のことを好きでも、これで冷めないわけが無いことすら分からないのか。



 ってことで、婚約破棄されようがどうでもいいが、不愉快極まりない気持ちにだけはなった。


 ハッキリ言おう、死ねと思った。



 私がどう罵倒してやろうか……内心策を巡らせていたら、このボケは……




「まぁ私に振られて悲しくても、一応私の義姉になるのだ、これからも頼んだぞ、あっはっはっはっは」



 私は当然単なる子爵令嬢なので、今まで物理に物を言わせたことなど無い。

 単なる貴族の女ですからね、当然である。


 だが人生で初めてグーパンチをしたくなる人の気持ちが分かった!



 男の方の一部がフィジカル訓練を全力でやる気持ちも分かった。


 こういう時のために、鍛えておくのですね。



 ……もちろん違うのは分かっていますが(笑)



「何をそんなに黙っているのだ?やはり悲しいのか?泣いていいんだぞ慰めてやろう、私は優しいからな!」




 私が衝動的に人生初めての蹴りを入れたくなった瞬間に現れたのは……妹のアンジェリカだった……




「……お姉様、私なんかがヘンリー様に愛されてしまって申し訳ありません……」




 ……アンジェリカは言っちゃ悪いが、出来が悪い、大抵の人ができることができなかったり、代わりに何か凄い才能があるかというと全く無い。


 つまりそのせいか恐ろしいまでに卑屈になっており、それで余計に他人をイラつかせることがあるタイプである。


 姉としては、適度に庇ったこともあるが、それは悪意が無いからだが、今回だけはなんだかなーと思うのである。


 まぁいいけど、こんな奴いらんから、引き取ってくれるのであれば……




「アンジェリカ!気にしないで、私の事は関係無しに幸せになるんだよ!」




 多分さっき蹴りたくなったことで、別にアンジェリカに怒ったわけでは無いのに、怒気がある言い方に少しなったのかもしれない。


 アンジェリカは……



「お姉様すみませんすみません!」


 などと言ってくる、私はいじめたつもりはないのに、




「おいフランソワ!私のアンジェリカをいじめるのではない!私を奪われたからってそんなのだからお前は愛されないんだ!ああアンジェリカ、どうして君はそんなにも可愛いのか!私が守って見せる!」




 ……はぁ心底下らない男である、何がいじめているんだ、馬鹿じゃないのか?


 さらにこういう弱弱しそうな女を守ってあげる男みたいなポーズをとる男って心底下らないと思う。


 そう言う相手にしか自分の価値を見出せないってことなのだから……



 私はこの馬鹿の相手をするのもアホらしくなったので言う。



「ヘンリー様?婚約破棄をしたのは貴方ですので、貴方の全責任でお願いしますね。それ以外望むことはありません!」



 私に有責があってたまるかと思ったのでこう言ったが、このカスは……



「何を言うか!婚約とは2人のものであり、責任は共にある!つまり婚約破棄の責任も君にもあるということだ!」



 私は顔面パンチを瞬間的にたたき込みたい気持ちを踏みとどまった自分を褒めてあげたいと思った。



「その婚約を破棄したのは貴方なのですから、責任が共にあるなんてものは論理的に成立しません……!」



 最後明らかに怒気が混じっていたが、こいつは、



「君はすぐに感情的になる!」


 などとほざいている、いや明らかに論理的に破綻してるのもお前なんだが?




「感情の問題では無く、貴方の言ってることが筋が通っていないというだけですわ!」



 私が文句を言ってやると、



「どこがだ?婚約は2人のものだ、だから責任は君にもあるんだよ!」



 だから破棄しておいてそれは通らないって言ってるだろうが、ボケカスが!




 婚約中に責任が2人ある、これについても異論はあるだろうが、百歩譲ってそれが通ったとしても、自分から婚約を破棄しておいて、婚約中の責任は2人にあるなんて持ち出せると思うこいつの知能はどうなっているのか。


 ああ馬鹿だから、アンジェリカみたいな言っちゃ悪いが自分よりも出来の悪そうな女相手に、守ってあげるなどとナイト気取りになるのですか、そうですか。



 私はあきれ果ててこのボケカスを無視して帰った。



 そしてお父様に言う。



「ヘンリーに婚約破棄をされて、アンジェリカと婚約したいと宣言されましたわ、別に家のために政略結婚を継続することに異論はありませんが、間違っても私に問題があったみたいな譲歩だけはしないで下さい!」



「……一体何があったというのだ?」



「言った通りですわ!」



 私が事情を説明すると、



「……分かったよ、家のために、ヘンリー殿の伯爵家との繋がりは欲しいから、アンジェリカに婚約者をスライドして継続するが、フランソワに問題があったかのような流れは避ける!」



「ありがとうございますわ!」



「……よく考えたら、アンジェリカなんて正直婚約先に困るタイプのものだったが、わざわざヘンリー殿が引き取ってくれるのならばありがたい!さらにフランソワは別の家に送ればいいのだから、フランソワを傷ものにしないのは、お前のためだけでなく、家のためでもあるってことだ!任せておけ!」



 ……流石お父様、貴族としてシビアなのと、私へのフォローが一致していて見事ですわ!



 こうして婚約破棄が決まったのだが、その前に六者会談が開かれた。



 私、お父様、お母様、ヘンリーのボケカス、ヘンリーの父である伯爵様と母である伯爵夫人様である。

 アンジェリカは私に気を使って同席させないとお父様は言ってたが、多分話し合いに参加させてもしょうがないから入れなかっただけだろう。



 伯爵様は言う「フランソワ殿、ヘンリーのワガママは申し訳ないのだが、本当に婚約破棄でいいのかね?」



 伯爵様が申し訳ないと思っているのは本当だろうけど、自分の家のヘンリーに価値があって、私が憤っているみたいな勘違いをしているのは頂けない。


 かといって、ヘンリーなんてボケカスと別れたことはむしろ僥倖であるなんて言ったら、いくら何でも伯爵に失礼になる。クソヘンリーはどうでもいいのだが、別に伯爵家と関係が破綻したいわけでもなければ、伯爵様に恨みがあるわけでも無いのだから……



 ということで私は仕方なくしおらしく……



「政略結婚はアンジェリカでもされることです。さらに気持ちというものはどうにもなりません、これも貴族の運命として受け入れるだけですわ!」


 とさわやかに述べておいたら、伯爵夫人様が、



「ああ、何て立派な令嬢なのでしょう、本来ならば私が義母になりたかったのですが、こうなったら仕方ないですね!」



 何て言ってくる、うん私を褒めたたえたい気持ちに嘘偽りは無いんだろうけど、こうなった原因は貴女の馬鹿息子のせいなんで、その辺り、なんだろうなぁ、家が上のおごりなのか、元々貴族としてこうなってしまったのか知らないが、どこか鈍感だなぁと思わなくはない。


 もちろん私に悪意があるわけでは無いから、別に腹が立ったりはしないけど、どこかこういう鈍感なお母様を持ったから、馬鹿ヘンリーが増長したのでは?と正直思わざるを得ないのであった。


 まぁ私も一応それなりに大人のつもりですから、言及はしませんけどね!



 お母様が「伯爵様に夫人様も、別にフランソワにそんなに気を使わなくてもいいのですよ?」


 などとフォローをしているが、この母親は典型的な、できる人に我慢を指せればいいってタイプで、丸く収めることしか考えていない。


 仕事のさせ方も、出来の悪いアンジェリカやそういう召使を庇うために、出来る人をこき使えばよいってタイプなのだから。


 あほらしくて、出来のいい召使ほど、出来ない振りをしていくだけってどうして気づけないのか……



 私は別に伯爵様と伯爵夫人様に気を使わせたいつもりは無い。だが今回だけはいくら相手が伯爵家であってもこっちが卑屈になる道理は無いでは無いか!

 特に被害者である私は!


 だからアンジェリカの卑屈な人間性ってお母様に似たのか、お母様の影響かの二択でしょうねと思わざるを得ない。



 アンジェリカは妹だからまだ許せたけど、私はお母様の事がますます嫌いになったのであった……!




 クソヘンリーだが、お母様の戯言を真に受けてこんなことを言い出す……!



「そうですよ、子爵夫人の言う通り、父上も母上も卑屈になる必要はありません!婚約破棄なんてのは2人の責任なのですから!」




 なんて戯言を言い出すので、私は殴りつけたくなった。こんな場だからこそだ!


 だがさすがに伯爵様が、


「たわけが!お前のワガママのせいでこうなっているんだろうが!黙っておれ!」


 と怒鳴りつけたので、さすがのゴミヘンリーも黙った。


 ざまぁみろ!


 この程度で怒りは解けませんけどね!



 そしてお母様もさすがにヘンリーの物言いにはムカついたのか、分かりやすくイライラしているのが分かった。娘ですんで、隠していても分かるんですよ長年の付き合いで!



 卑屈になればいいってものじゃないんですよ、こういうつけあがるゴミが出るのだから!




 雰囲気が悪くなりそうなのを察したのかお父様がすかさずに、




「伯爵様、我々子爵家は伯爵家との付き合いを今後も重視していきたいと思います、これからもよろしくお願いします!」


 と上手くまとめようとして、伯爵様もさるもの、それを察したのか、



「もちろんです子爵殿、此度はうちが迷惑をかけましたが、これからもよろしく頼みます!」


 と応じたので、何とか丸く?収まった。


 やれやれ、馬鹿ヘンリーのせいだけど、私は何1つ得をしてないクソ会見ですよね。



 しかしここで私は言っておきたい!

 チャンスと思ったのもある。伯爵様の言質を取らないとね!



「私は婚約破棄は運命だと思っているので構いません!しかし、私に有責があったみたいなことになることだけは今後の私の未来に影響があるので、どうかなるべくご慈悲を下さいませ!」



 低姿勢で懇願を装っているが、ようはクソヘンリーが悪いってことにしろって言ってるも同然なのだ。


 ヘンリーが「何を言うか!責任は2人にある!それが婚約と言うものだろう!」


 と馬鹿の一点張りをするが、伯爵様は、



「たわけが!婚約破棄をしておいて、そんな寝言が通るか!フランソワ殿の未来を潰したいなんてことはもちろんないので、ヘンリーの気まぐれという形にしてくれて構わない!」




 ……伯爵様は多分この件で借りを作りたくないのだろう、おかげで私に責任は無いことになり、未来が困ることは多分無さそうだ。


 ここだけはちゃんと言っておいて良かった、言質を取ったんでね。


 伯爵様の言質さえ取れば、後は馬鹿女共が、こういう私程度の下級貴族の噂を楽しむなんて、よほど出来の悪いアホ上位貴族か、浅ましい下位貴族しかいないんで、こいつらの戯言は無視できる!



 ひとまず私は安心したのであった!




 こうして私の婚約破棄と、アンジェリカとヘンリーの婚約が決まり、きっと両家の親4人も、これ以上のトラブルは嫌だと思ったのか、結婚もすぐに決まったのであった。



 私はというとお父様が「良い相手がいないか探しているが候補はこれだけいるがどうかね」


 などと色々紹介してくるが、何て言うか、私も失敗があったのか慎重になっているのか知らないが、中々これだ!と思える人がいないせいで、ウダウダと迷っているのであった!


 凄く嫌なわけではないけど、この人と結婚したいわ!って人もいない、こんな感じだから、そういう方の中から選ぶとか、難しいですよね?


 こう悩んでいるとある日、偶然ヘンリーのボケカスとアンジェリカの2人と出会った。





 アンジェリカは私を見ると、目を逸らして、非常に卑屈な態度になる。



 私が何度「私の事は気にせずに幸せになってね」と言っても私から略奪したみたいなことを思っているのだろう。


 はぁ~むしろ奪ってくれてありがとうとしか思っていないのに、どうしてそれが伝わらないのか!


 最近はむしろアンジェリカと会うことすら嫌になっていたのである。


 そこにもっと会う事すら論外のヘンリー付きとなれば、私の気持ちはとても嫌な気分になったのは言うまでも無い!



 ヘンリーは言う。



「おいフランソワ!お前私が忘れられなくて、中々新しい婚約者ができないらしいな!」



 はぁ?何言ってるんだこいつ、ありえないけど、お前が仮に婚約者候補にいたら、こいつだけは拒否ってお父様に言ってるわ!話にならない!


 私が無視して歩き去ろうとすると、



「そんなにも傷ついているお前に朗報だ!今ならば私が結婚してやってもいいぞ?アンジェリカは愛人にする!」



 なんて戯言を言い出した!


 はぁ?こいつ頭おかしいの?????????????????


 アンジェリカの目の前で何言ってるの!?



 アンジェリカは「すみません私が不出来なので、離婚されてしまうのですね」



 何て卑屈にすがりついている、ヘンリーの奴だが、



「そうだ!お前は妻としてあまりにも相応しくない!愛人として私に尽くすしかできない女だ!」



 何て言ってる、ふざけるなよ、お前はアンジェリカを守るんじゃなかったのか!



 私は激怒して言った!



「アンジェリカを守るんじゃなかったんですか?」



 明らかに怒気がこもっている……!




「こいつは妻としてできが悪い、さらに物足りないのだ!」



「物足りないですって!?」




「そうだ!こいつはひたすら私の顔色をうかがうことしかできない!そんな女では面白くない!愛人で十分だろう!」




 最初それがいいとか言ってたくせに、何言ってるんだこいつは!


 私はハッキリ言ってやる!



「そんなワガママなガキ以下の戯けではどんな女でも満足できないでしょうね、相手は奴隷じゃないのだから、さらに奴隷は奴隷で物足りないとか言い出す馬鹿なのだから!」



 怒りもあって言いたい放題言ったが、ヘンリーは怒り出した!



「貴様!伯爵令息であるこの私に何て生意気な口をきくんだ!」



 はい馬鹿確定。



「あら?アンジェリカの従順さが物足りないとか言うのですから、ついうっかりと思ったことを言ったらお気に召さなかったのですか?」




「何だと!だからお前は婚約破棄されたんだ!」



「そうですね、良かったですね、だったらそんな私と今さら結婚をしてやるってどういうことですかね(笑)」


 私が見下した笑いをすると、ヘンリーは、



「この私が譲歩してやったのにお前は何様だ!」



 などと切れてきた、私も負けずに、



「どこが譲歩してるんですかね」


 ってあきれ果てて言うと、ヘンリーはついに



「たかが子爵家の小娘が偉そうに!この私は伯爵令息様だぞ!」


 と威張り散らした。


 殴りつけたくなるほどふざけるなと思ったが、一応こいつの家の身分が上なことは明らかである。


 そこだけは困るんだよなと思っていたら、偶然現れたのが天下の公爵令嬢様ご一行で、公爵令嬢様が言い出した。



「あら、貴方そんなに偉いの?じゃあ私はどれくらい偉くなれるのかしら?」



 この皮肉の前に、ヘンリーは逃げ出して公爵令嬢様は言う。



「……よく事情は知らないけど、貴女災難ね、あんなのが婚約者だとしたら同情しますわ!」



 などと私に話しかけてくる。



 私は今までのいきさつを話すと、



「それは災難だったわね、それにしても下位貴族は幸せでいいわね」



 なんて皮肉を言ってくる。私が、


「どういうことですか?」


 というと公爵令嬢様は言う。



「狭い世界で威張っても何とかなれるのだから!」




「いや浅学の身なので分からないのですが……」



 私が恐る恐るたずねると……



「貴女私のこと無敵の公爵令嬢様みたいに思ってらっしゃる?」



「そうですね、私からしたら天上の方ですから!」




「……そんなわけないじゃない、私も貴女も大して変わらないのよ、だって陛下からしたら全員家臣に過ぎないのだから!上位貴族ほど、そんな恐ろしい陛下に接する機会が多いから自覚してるのよ、その自覚が無いあのヘンリーって男は幸せ者ねって皮肉を言ったのよ……」




 ……なるほど、この国の本当の権力は誰にあり、誰が恐ろしいのか、私は知識としては知っていたが、生まれて初めて実感をした。


 ヘンリー何かに関わっている場合では無い、私は貴族令嬢としてもっと真っ当に生きないと……


 そう思っていると、「貴女も中々いい感じじゃないこれから仲良くしましょうね」


 公爵令嬢様にこう言われたので、「ありがたき幸せ!」


 こうして私はもっと広い世界を学びヘンリーごときが関わらない世界を知れる喜びを感じていたのであった!


 公爵令嬢様これからよろしくお願いしますわ!



 ……後はこれは私次第ではあるが、今のお父様の紹介してくれる婚約者候補よりも、公爵令嬢様のお知り合いで、私と釣り合う方がいたらなと思わなくはない。


 こんな下心があったら怒られるかなぁ(笑)



 ちなみにヘンリーだが、廃嫡されたらしい。


 何で?と思ったが、公爵令嬢様の不興を買ったことで、あの家の将来性は無いのでは?という噂がたち、伯爵様が、日頃からきっと不出来さをなげいていたのだろう、さらに、アンジェリカもアンジェリカなのだが、ヘンリーに気に入られたい一心で、奴隷のような振る舞いをしてまで媚びへつらい、それが表ざたになったら問題になるということで、ヘンリーの廃嫡と、アンジェリカとの離婚を伯爵様は決めたらしい。


 こうしてヘンリーはどうなったかは知らないが、馬鹿なお母様は、アンジェリカが奴隷のように尽くそうとした件について、自分の事は棚に上げて、ヘンリーに憤っていた!


 いやいや、貴女が甘やかして、かつ卑屈な振る舞いをしているから、アンジェリカは影響を受けただけだと思いますけどね!