だから、知る由もなかった。 その遥か後方。 ユキが私を追いかけて来ていたことなんて。 まして、遠くへ走り去った私の耳に、届くはずもなかった。 「俺は『フロアから引っ込め』って言ったんだ。二階に控えてろって、そう。……なんで。行くなよ、紫藤のところなんか」 サンコンの伝言ミスも。 独り言のように嘆く、ユキの本心も。