「わかるだろ?なぁ、わかるよな?……わかって、くれよ」
──『俺は、俺のダチがやられたから、だから紫藤にやり返す。それの何が悪いんだよ』
誰にも理解してもらえないと思う、悲しみ。
どうにもできない、孤独。
バンの背中はその日から、ずっと泣いたままだったのかもしれない。
私は、似た感覚を知ってる。
「……バン、くん」
「呼ぶな!俺の名前をッ!虫唾(ムシズ)が走るんだよ!!」
勢いよく振り返ったバンは、目から大粒の涙を零しながら、ギッと私を睨みつけた。
「出てけ……」
「………」
「さっさと、ここから出てけ」
私はぎゅっと両手を丸めた。
「……ゃ」
「ああ!?」
「いや……だ」
バンはふるふると怒りを煮立たせた。
今にもこちらに飛びかかってきそうだった。
思わず、身構えたとき。
「おはようございます」
出勤してきたサンコンが更衣室のドアを開けた。
「珍しいですね。バンくんが私よりも早く出勤するだなんて」
いつも通り穏やかなトーンに、張り詰めていた空気がふっと緩む。
ロッカーに私物を入れていくサンコンを尻目に、バンが更衣室を出た。
私も後に続けば。
バンの低く、じっとりとした声が、フロアに不気味に響いた。
「絶対ぇ、追い出してやる……」


