野間は私が返事をしなくても歩いた。
私も、その後ろを黙ってついて歩く。
「あ、そうだ。あまり野暮なことは言いたくないですが」
「なに?」
「これまでずっと、紫藤さんはカナコさんがシトウで傷つくことがないように、眼を置いていました」
「……眼を置く?」
「街のウワサは大抵アテになりません。紫藤さんのことを、カナコさんがどう見てるのかは知りませんが──」
野間は足を止めず、ちらりとこちらを振り返った。
「これまでずっと。紫藤さんは、紫藤さんなりにあなたを守ってた」
「………」
「それだけは、言っておきます」
『眼を置く』とは。
街に見張りを置いて、私を守ってくれていた。
そういう意味だと思った。
シドは怖い。
乱暴で、強引で、いつでも簡単に私を攫っていってしまう。
だけど──……。
出会ったころから、私は何度もあの人に助けられている。
それは、たしかなことだった。


