野間について歩きながら、やがてシトウにさしかかったあたりの路地だった。
ちらり、と横へ視線を飛ばした野間が「あー……」と深く嘆いた。
「すません。僕ね、ホントこういうのタイミング悪いんすよね」
「どうしたの?」
「ちょい気付くのが遅かったっぽくって」
「野間くん?」
足を止めるなり、周囲から声が湧き上がった。
「女連れかよ野間ぁ」
「チャーンス」
「いいとこ出くわしたぜ」
「今日こそぶっ殺してやるよ」
左右からぞろぞろと集まってくるガラの悪い男たち。
聞かなくてもわかった。
――これから喧嘩が始まる。
野間は私の手首を掴み、ぐっと自分の方へ引き寄せた。
私をすぐ傍に立たせると、帽子のツバをクルッと後ろに回す。
「こりゃ早くも正念場っすねッ!」
そう言って、前方からやってきた男の一人に強烈な先制パンチを食らわせた。

