「僕はシトウの眼だ。カナコさんのことだって、この眼でずっと視てきました」
それはまるで、私を監視していたかのような口ぶり。
「今の居場所……AnBarっていうんでしたっけ。カナコさんにとって、とても大切なんじゃないですか?」
……この人は私のどこまでを、知っているの。
「紫藤さんが指示を出すよりも早く。……それか、多夜さんが痺れを切らせるよりも早く」
「………」
「この二人の先回りをして動くのは、そう簡単なことじゃないんですよ」
私の臆病な目と。
腹の内を見せない、野間の強い目がぶつかった。
「今日、僕がカナコさんを迎えに来たのは、僕の意志」
「………」
「この意味、わかります?」
「私のためだって言いたいの?」
「じゃあ例えば、多夜さんが動いたとしたら。送迎という点においては、営業中であろうがなんだろうが、お構いなしでしょう」
「………」
「紫藤さんとの関係を、身内に隠しておきたいカナコさんにとっては、最悪な送迎になる」
思わず、目を見開いた。
「紫藤さんが動いたとしたら……まぁ、いきなり店を潰しはしないでしょうが。露天街からの見え方は、あまりよくないかもしれませんね」
『シトウの中でカナコさんの感覚に一番近い』
野間は、私が失くしたくないものを……知ってる。
「初めに言った通りです。『僕が全力でサポートします』」
「………」
「どうします?僕についてきますか?」
やっぱり、野間だってシトウの人間だ。
私がどう答えるかなんて、きっとわかってる。
だって。
悔しいくらい、野間の言う通り。
私の事情に、AnBarのみんなを巻き込みたくない。
それに。
私、シドに会いたくないわけじゃ……ない。
「………」


