「……まぁ、こういうのは自分で気づくのが一番ですからね」
「野間くん」
「はい」
「私、行かなきゃいけない?」
「いいえ?」
「……いいの?」
「カナコさんが嫌だと言うのなら、僕だって考えます」
野間はシトウの人だ。
きっと私に拒否権はない。
そう思っていたものだから、野間の回答はとても意外だった。
「僕のこと、疑ってます?」
「だって……断っちゃいけないものだと思って」
「多分なんですけど、シトウの中でカナコさんの感覚に一番近いのは僕だと思うんですよね」
「………」
「紫藤さんほど神かかって無ければ、多夜さんほど無関心でもありませんから、僕は」
「その中だと確かに、まぁ……」
「ですから、カナコさんが嫌だと言えば、僕くらいは尊重してあげたいなと思います。ただ――…」
不自然に言葉を切った野間に、顔を上げた。
野間は考えるように額に右手を当てていて、その中指にある”目玉”のタトゥが、じっとこちらを見ているようで不気味だった。
「本当に、嫌ですか?」
「……どういう、意味?」
「僕はシトウの眼だ。カナコさんの事だってこの眼でずっと見てきました」
それはまるで私を監視していたかのような口ぶり。
それでいて、まさか私がシドに会いたいと思っている、とでも言うのだろうか。
だけどそれは違った。
野間の眼は、別の視点で私を捉えていた。
「今の居場所……AnBarでしたっけ。カナコさんにとってとても大切なんじゃないですか?きっと、今のカナコさんにとっては何よりも」
「……それが、何の関係があるの?」
「紫藤さんが指示を出すより早く……それか、多夜さんが痺れを切らせるよりも早く。この二人の先回りをして動くのはそう簡単じゃないんですよ。今日、僕がカナコさんを迎えに来たのは、僕の意志」
「………」
「例えば、多夜さんが動いたらどうなると思います?カナコさんの都合の何もかもを無視して強引に連れ去ると思いませんか?店の誰かの居る営業中でもお構いなし。紫藤さんとの関係を隠しておきたいカナコさんにとっては最低最悪な送迎になる」
「野間くん、それって結局……」
「どうします?ついてきますか?」

