「私をここで待ってたの?」
「はい」
「話をするために?」
野間は「んーっと」と、言葉を選ぶように空を仰ぎながら、帽子を被り直した。
「それだけじゃないっていうか」
「Re:bidoってところに連れて行くのは、どうして?」
「紫藤さんが待ってます」
──シドが、私を待ってる?
「………」
足を止め、何も言えないでいた。
「……Re:bidoは、シトウの中でも限られた人間しか出入りできません」
「………」
「そんな場所に、カナコさんは足を踏み入れた」
なんとなく、察した。
Re:bidoは、以前シドに連れられた場所なんだろう。
──『手っ取り早ぇ方法、教えてやろうか』
きっと一夜を過ごした……あの部屋のことだ。
あれから、もう一週間が経つ。
「自分が今どんな立場か。自覚あります?」
「立場?」
私の立場なんて。
そんな大層なもの、シドや、シトウの中にあるとは思えない。
前のことは、きっとちょっとした事故。
いろんなタイミングが重なって、間違っただけ。
シドにとっても、私にとっても。


