どうしようかな。
話が進んでいるようで、進んでない。
難しい顔をしてしまっていたのか。
刺青男が、機嫌をうかがうように「カナコさん?」と呼んだ。
「聞いていい?」
「どぞ。なんでも」
「あなた、誰?」
男は眉を上げて「たしかに」と相槌を打った。
「そうっすね、そうっすよね。そうだ、僕が一方的に知ってるだけだった」
男は浅く被ったキャップを脱いで、龍の刺青の目立つ右手で前髪を後ろに掻き上げる。
軽く身なりを整えてから、ピシッと綺麗な90度でお辞儀をした。
「僕、野間 健太郎(ノマ ケンタロウ)っていいます」
「のま、けんたろうくん……」
「紫藤さんからは『野間』って呼ばれてます。まぁ、好きに呼んでください」
「野間くんね。私は──」
「カナコさんっすよね!」
「あ、うん」
そうだった。
この人は私のことを知ってる。
シド関係の、人。


