余所者-よそもの-【 2 】



「わからないんだよね」

「……何がですか」


「なんで腹が立つのか」

「………」


「ここまで俺をイラつかせるの、お前くらいだよ」


「すみません……」

何が、ユキをそんなに怒らせてしまうんだろう。

怒らせてやろうだなんて、一ミリだって思ってないのに。


「………」
「………」

気まずい沈黙。

ふと、シャワーの水流を遮るユキの左手に目を落とした。


……冷水に晒され続けるその手が、赤くなっている。


私はジーンズの裾を太ももまでたくし上げ、シャワーを持つユキの右手を膝の方へ誘導した。

膝下で水流を受け止めて足首まで水を流せば、もう手で遮る必要はない。


ユキの左手をシャワーから剥がし、そっと両手で包み込む。


「……冷たい」

温めてあげたくて。


私の手の中で、ユキの左手がピクリ、と跳ねた。

かと思えば、シャワーヘッドが、ゴト……と床に転がった。


「………」

どうしたんだろう?

そう思った瞬間、噴水のように水が四方八方へ激しく散りだした。


顔に跳ねる水を避けながら、薄目でユキを見れば。


────え?


呆気に取られたような、見たことのない表情。

色白の頬に、うっすらと赤みが差している。


一瞬、そんな……気がした。


ユキはすぐにシャワーヘッドを拾い上げ、私に預けた。

そして俯いたまま、何も言わずに浴室を出て行ってしまった。


さっきの顔は、見間違い?

うん。
たぶん、そう。

でも、なんでだろう。


私だって、顔が熱くなってきた……。