真っ白な空間。
ここは、隔離された精神病院。
アオイが花瓶の花を替えている。
やめてって言うのに、枯れた花を抜き取って、綺麗な花に入れ替えてしまう。
アオイはわかっていない。
花は、枯れる間際が一番美しい。
「ねぇ、アオイ」
「なに?」
「シド、喧嘩してないの?」
「うん。減った」
「最近、謝りに来てくれないの」
「………」
「電話にも、出ない」
「………」
「私、もう要らないのかな」
アオイが鞄から、撮りためた写真を束で取り出した。
「……この女の人、だぁれ?」
写真の中のシドは。
もう、私を見ている時の顔じゃなかった。
罪悪感は、どこへ行っちゃったの?
「……いやだ」
消えちゃう。消えちゃう。
シドの中から、私が、消えちゃう。
それだけは絶対に嫌だ。
「消えないもの……」
私にしまってある、シドの罪悪感。
怒り。悲しみ。傷。
「……消えない、もの」
――そうだ。
消えないものに、なればいいんだ。
私が。
あの人にとっての、一番深い傷になろう。
二度と癒えないくらい。
一生、消えないくらい。


