余所者-よそもの-【 2 】



真っ白な空間。

ここは、隔離された精神病院。


アオイが花瓶の花を替えている。

やめてって言うのに、枯れた花を抜き取って、綺麗な花に入れ替えてしまう。

アオイはわかっていない。


花は、枯れる間際が一番美しい。


「ねぇ、アオイ」

「なに?」

「シド、喧嘩してないの?」

「うん。減った」

「最近、謝りに来てくれないの」

「………」

「電話にも、出ない」

「………」

「私、もう要らないのかな」


アオイが鞄から、撮りためた写真を束で取り出した。


「……この女の人、だぁれ?」


写真の中のシドは。

もう、私を見ている時の顔じゃなかった。

罪悪感は、どこへ行っちゃったの?


「……いやだ」


消えちゃう。消えちゃう。

シドの中から、私が、消えちゃう。


それだけは絶対に嫌だ。


「消えないもの……」


私にしまってある、シドの罪悪感。

怒り。悲しみ。傷。


「……消えない、もの」


――そうだ。

消えないものに、なればいいんだ。


私が。

あの人にとっての、一番深い傷になろう。


二度と癒えないくらい。

一生、消えないくらい。