足りない。
足りない。
お前を守るには。
だって諦められない。
もう……手放せない。
この痛みも、この苛立ちも。
俺は、お前でしか感じることができない。
――『お前って、気に入ったヤツにあだ名をつけるクセがあるよな』
ユキの中で、いつかの潤の言葉と共に、彼の拳で打たれた胸の感触が蘇った。
そうか。
俺はもうずっと前から、お前しか見えていなかった。
俺を見てほしい。
俺だけを、見てほしい。
「かぁこ」
――お前が、欲しい。
もう、欲しくて、
欲しくて、たまらないんだ。
ユキは震える手に力を込め、カナコを強く抱き寄せた。
彼女の噛んだ舌の傷を、口の中で確かめる。
鉄の味が、じわりと、広がった。
「……痛いね」


