マンションに戻り、黙々とパソコンを操作しているユキを尻目に、キッチンへと入った。
食材をキッチン台に並べ、順番に細かく切っていく。
食材の準備が整えば、新品のフライパンにバターを置いて、火にかけた。
じわじわと溶けるバターの香りが、キッチンに広がる。
──『カナ、まだ?腹減った』
──『もうすぐできるよ』
「………」
いけない、ぼうっとしてた。
気がつけば、バターが茶色く焦げ始めていた。
……しまった、早く食材を入れなきゃ。
慌てて食材に手を伸ばした。
その瞬間、フライパンの取っ手に腕が当たった。
ガタン、と大きく傾くフライパン。
コンロから外れ、熱々のまま足元へと落ちてきた。
──ゴトンッ!という物音。
「きゃっ」と悲鳴を上げてしまった。
「どうした?」
奥から弾かれたようにやってきたユキが、こちらを覗き込んだ。
「ユキさん……ごめんなさい。床が……」
慌てて持ち上げたフライパン。
それでも、熱されたフライパンが直撃した床には、黒々とした焦げ跡が残っていた。
「は?」
「………」
「おい……」
ユキが、私のすぐ隣にしゃがみ込む。
「そんなこと言ってる場合か!」
フライパンを持つ、片手。
もう片方の手で押さえていたのは、自分の足首。
落ちた拍子にフライパンが触れ、溶けたバターまで肌にかかってしまっていた。


