今日は土曜日。
AnBarの営業終了後、サンコンとバンの帰宅を見届けてから。
私は一人、支度を始めた。
いつもの入浴セットに加えて、今日は翌日の着替えとメイクポーチ。
普段よりも多くなった荷物を持って、深夜の街に出る。
――『じゃあ土曜の夜は絶対に来い』
シドとの約束があった。
私は、露天街とシトウの交わる十字路の裏。人通りの少ないこの場所まで歩いた。
そこで見つけた、黒の大型バイクに跨った野間の姿。
「お疲れ様っす」
『AnBarの前に来ないでほしい』、と野間の送迎に注文をつけたのは一昨日のことだった。
野間と連絡先を交換して、この人目の少ない場所を指定させてもらった。
間違っても、AnBarの誰かにこの関係を知られたくない。
後ろめたい気持ちのまま待ち合わせ場所を決めた私に、野間は「いっすよ」と快く応じてくれた。
車体の大きなバイクの後ろ。
野間の手を借りてやっとのことで高いシートに乗り込む。
「んじゃ、しっかり掴まっててくださいね」
そう言って私にだけヘルメットを被せると、バイクのエンジンを派手に吹かした。
徒歩でも十分に歩ける距離。
たった五分程度の短いドライブを終えてバイクを降り、薄暗い細い路地を二人で歩く。

