「あのね、まずどこに向かうか教えてくれる?」
「Re:bido(リビドー)へ」
「……どこそれ」
「あれ?聞いてません?」
「知らないけど」
そう答えれば、男は「あー」と頭を片手で抱えた。
「そっか、あの人めっちゃ言葉足らずですもんね」
「あの人?」
「やっぱ来てよかった。僕が全力でお二人をサポートしますんで、安心してください」
「………」
話が一向に進まない。
さっきからこの人は何を言ってるんだろう。
きっと私は相当不満げな顔をしていたんだと思う。
男は「カナコさん?」と機嫌を窺ってきた。
「聞いていい?」
「どぞ。なんでも」
「あなた、誰?」
そもそもの話から尋ねてみれば、男は目を丸くして「たしかに」と相槌を打った。
「そうっすね、そうっすよね。そうだ、僕が一方的に知ってるだけだった」
男は浅く被ったキャップを脱いで、龍の刺青の目立つ右手で前髪を後ろに掻き上げる。
軽く身なりを整えてから、ピシッと綺麗な90度でお辞儀をした。
「僕、野間 健太郎(ノマ ケンタロウ)っていいます」
「のま、けんたろうくん……」
「紫藤さんからは『野間』って呼ばれてます。まぁ、好きに呼んでください」
「野間くんね。私は――」
「カナコさんっすよね!」
「あ、うん」
この人は私のどこまでを知っているんだろう。

