ほっと安心してキッチンに入り、飛び散ったバターを綺麗に拭き取って、フライパンを洗う。
さて、再調理だ。と、腕を捲ると、いつの間にかキッチンの壁にもたれかかったユキがじっとこちらを見ていることに気が付く。
「……あの。見られてると作りにくいんですけど」
「いや、ホントに料理やったことあるのか心配になって」
「料理はやったことあります。……さっきはドジしましたけど、大丈夫ですから」
「………」
じとっと私を見るこの目つき。
どうやら信用されてないようだ。
「まぁ、見ててください」
「うん。腹は減った」
仕方ない。ユキの視線を感じながら、調理を再開した。
ユキが見ていてくれるおかげで、幻聴のようなものに頭をぼうっとさせられることもなかった。
カチャカチャとフライパンを振って、あっという間に完成。
二つのお皿に綺麗に並んだ、きつね色のオムライスに小さく拍手をする。
ソファの前のローテーブルに運んで、ユキと一緒にスプーンを動かした。
「どうですか?」と、尋ねれば、
「ちゃんと旨いね」とユキが笑う。
柔らかく目元を下げたその表情に、
――『やっぱカナのオムライスは旨いな!』
そんな彼の影が重なったけれど、不思議だった。
今はどうしてか、それほど悲しく感じなかった。

