ユキは、ソファの前のローテーブルにノートパソコンを置いて、カタカタとなにやら作業をしている様子。
パソコンの隣には、コーヒーショップのテイクアウトカップ。
足元には、脱ぎ捨てたジャケットやカバン、紙袋が無造作に転がっていた。
家政婦として通いだしてから、ユキがこの時間に居るのは初めてだった。
自宅でパソコンを開いているところだって、見たことがなかったのに。
……部屋が片付いたからかな。
「今日はここで仕事ですか?」
「仕事っていうか、ちょっと金を転がしてるだけ」
金を転がす?
後ろからちらっと見えたパソコンの画面。
緑と赤のグラフが忙しなく動いていて、見ているだけで目が回りそう。
「ユキさんの仕事って……AnBarとか、お店の経営だけじゃないんですか?」
「まぁ。あとは投資とか、いろいろ」
ずっと不思議だった。
どうしてこの人は湯水のごとくお金を使えるのか。
尽きることのない資金源が、他にあるに違いない、そう思ってはいたけれど。
「………」
ユキはパソコン画面から目を離さず、とても集中しているようだった。
邪魔しちゃ悪いかな。


