何がそんなにユキを怒らせてしまってるんだろう。
怒らせてやろうなんて一ミリも思ってないのに。
思ってないから、何をどう謝ればいいのかわからなくて、困る。
ふと、シャワーの水圧を遮ってくれているユキの手元を見れば、冷水に晒され続けて真っ赤になっていることに気が付いた。
私はジーンズの裾を太ももまでたくし上げると、ユキが持つシャワーヘッドを膝の方に持ってきた。
膝に水圧を受け止めれば、ユキが手で抑える必要がなくなる。
空いた、ユキの左手。
赤くなり、氷みたいに冷たくなった手を、両手でそっと包み込むように覆った。
温めてあげようと思った。
するとピク、とユキの手が跳ねたかと思えば、シャワーヘッドがころん、と床に転がった。
噴水のように水が四方八方へと激しく散る。
顔に跳ねてくる水を避けながら、ユキを見れば。
――え?
呆気に取られたような、見たことのないユキの表情。
色白のユキの頬がほんとりと赤い。
一瞬、そんな……気がした。
「………」
「………」
ユキはすぐにシャワーを手に取り直して私に預けると、何も言わず浴室を出て行ってしまった。
見間違い?
うん、きっと見間違いかな。
いつものクールで余裕のあるユキらしくない顔だった。
っていうか、なんでだろう。
私だって顔が熱くなってきた。

